12球団Jr.に5人選出、強豪高で主力に成長 全国大会は“脇道”…育成型の学童チーム

町田玉川学園少年クラブの練習の様子【写真:間淳】
町田玉川学園少年クラブの練習の様子【写真:間淳】

東京・町田市の町田玉川学園少年クラブ…OBは甲子園出場校でも活躍

 メインストリートには、将来を見据えた個を伸ばす指導がある。東京都町田市の少年野球チーム「町田玉川学園少年クラブ(以下、町田玉川)」は昨年、プロ野球12球団によるジュニアチームに5人が選出された。チーム方針に掲げる「高校や大学で野球を満喫できる選手の育成」の言葉通り、甲子園出場校で主力として活躍するOBもいる。

 指導者としては目の前の試合に勝利したい気持ちはある。戦術や戦略を磨けば全国大会に出場できる手応えも感じている。ただ、町田玉川には、ぶれない軸がある。2015年から監督を務め、現在は代表も兼任する菊池拓平さんが語る。

「うちのチームは全国大会を目標にはしていますが、ゴールにはしていません。メインストリートは高校、大学につながる指導。少し逸れたところに全国大会があります。その意識は子どもたちにはなくても構いませんが、指導者が子どもたちの将来の選択肢を増やすことを大切にしています」

 町田玉川の活動は土日祝日に限られる。年間の試合数は低学年で40試合、高学年で80試合ほど。実戦経験を重視して1日に複数試合を組むチームと比べると、半分程度になる。菊池代表は「実戦経験が足りなくて、全国大会に行けないのかもしれませんね」と話すが、小学生世代には練習で個の力を伸ばす時間が重要だと考えている。

「活動時間が限られているので、平日に自宅で復習して次の土日に試すサイクルをつくりたいと思っています。練習では、できるようになった充実感と、来週までにできるようになりたいと感じる意識を、子どもたちが持てる指導を心掛けています」

先を見越した土台と考える力…高校や大学で活躍する個の育成

 練習の特徴は小さなグループに分けて、豊富なメニューをこなすところにある。打撃練習では竹バットや極端に細いバット、手作りのシーソーなども活用する。菊池代表は「野球と出会って間もない子どもたちには、たくさんボールに触れる機会が重要です。ワクワク楽しみながら練習できるように、短い時間で様々な練習をローテーションしています」と説明する。

 考える力を養う指導も重視している。選手の課題を1つ1つ指摘して走塁を中心とした戦術や戦略を教え込めば、短期的には選手が成長して試合で勝てる確率は上がるかもしれない。だが、町田玉川では指導者が「何のための練習だと思う?」「この練習のポイントは?」と選手に考える時間を与える。

 菊池代表は「中学、高校に行って1学年30、40人の選手がいたら、まんべんなく十分な指導を受けられない可能性があります。その時に、自分で考える力があるかどうかで差が出ます。小学生のうちは答えを出せなくても良いので、考える習慣をつけることが大事だと思っています」と語る。

 個の力を伸ばすチーム方針は、成果が表れている。プロ野球選手への登竜門とも言われる「NPB12球団ジュニアトーナメント」に、昨年は5人が出場した。OBは、今秋の神奈川県大会を制した桐光学園や、今春の選抜大会を制した山梨学院を夏の県大会で破った駿台甲府など、強豪校で主力を務めている。指導者とすれば、全国大会出場をメインストリートに据えたい欲はある。だが、菊池代表は道を見失わない。

「先を見越して土台をつくりながら、大きな大会でも勝つのがカッコいいと選手に伝え、自分にも言い聞かせています。小学生の時に勝つことを目的にするのであれば、他の指導法もあって良いと思いますが、私たちのチームはスケールの大きな選手を育てたいと考えています」

 選手育成型のチーム、全国大会常連を目指すチーム、体を動かす楽しさを求めるチーム……。選手や保護者が求める方針は違う。少年野球チームが進む道は1本ではない。

(間淳 / Jun Aida)

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