北大法学部に在籍中の秀才…異色すぎる155キロ右腕　魔球で覚醒した“ドラフト隠し玉”

四国IL徳島の宮澤太成、北海道大法学部に在籍しながら独立リーグでプレー

　北海道大法学部に在籍しながら、独立リーグからドラフト指名を狙う異色の最速155キロ右腕がいる。四国アイランドリーグplus・徳島インディゴソックスの宮澤太成投手だ。昨季は北海道大で主将も務めるなど文武両道で、春までに単位を取り終えた今季は野球一筋の環境へ。「切り開いていくというか、チャレンジングなことをしていこうという気持ち」と同大学初のNPB入りを目指す。

　長野高では外野手としてプレーしていたが、2年生のときにチーム事情で投手が足りなくなり転向。高校時代は最速140キロと無名だったが、野球の面白さに目覚めた。「授業はしっかり聞きますけど、もう学校が終わったら部活に行って、その後も自主練習して、もう家に帰ったら夜の10時」。大学選びには文武両道を掲げ、「自分の価値観とマッチングした」という北海道大に進んだ。

　大学時代は、24時間のほとんどを野球に捧げてきた。生徒の自主性を大切にする指導方針の中、体作りから私生活まで、ゴールに対して自分自身で道筋を立てて試行錯誤。練習メニューも自分に何が必要なのかを突き詰めながら実践すると、徐々に成果が現れてきた。最終年を迎える直前のオフには151キロをマークするまでになり、「初めてプロ野球を明確に意識するようになりました」と振り返る。

　最後のシーズンでは主将も務めたが、秋のリーグ戦は故障もあって思うように投げられなかった。それでも情熱は失わず、1年留年によって大学最後の1年間は公式戦に出場できないことから、独立リーグに飛び込むことを決めた。しかし、NPBを目指す若者がしのぎを削る舞台は甘くなかった。前半戦は打ち込まれ、「（自分が）プロに行けるなんて誰1人も思わなかった」という惨状だった。

前半戦は苦戦も「逃げ出しちゃう人間になってしまうのが怖くて、嫌で」

「プロを目指すって言って来たのに、何も結果を出さないまま長野とか北海道に帰ることになるなって思って。すごい自分が情けないっていうか、苦しくて。本当に苦しかったですね。多分、人生で1番苦しかった時期だと思います」。それでももがき続けると、ついに結果が出てきた。直球は155キロまで急成長し、ソフトバンクの藤井皓哉投手を彷彿とさせる決め球のフォークを習得した。

　逃げ出したくなる瞬間もあったが、強い信念で踏みとどまった。「1番好きな野球でできないなら、他の仕事でも現実から目を背けてしまう。自分は逃げ出しちゃう人間になってしまうのかなと思って。そういう自分になってしまうのがすごい怖くて、嫌で。だから人生で1番苦しいかもしれないけど、もう頑張るしかない」と覚悟を決め、血の滲むような努力でドラフト候補に躍り出た。

「自分の人生は自分で切り開いていけると考えていて。本当にやりたいと思うことなら、その心に素直に従ってチャレンジした方がいい。失敗したらどうしようとか、マイナスな面もすごい出てくると思うんですけど、本当に一生懸命やれば、なるようになる。自分がドラフトにかかってプロになって、一歩勇気を踏み出すのに戸惑ってる人の心の支えになりたいなと思っているんです」

　変化球の空振り率は、四国ILでナンバーワン。鋭く落ちるフォークは、魔球と呼んでも過言ではなく、ドラフト会議では隠し玉になりそうだ。「あの宮澤がプロになれたなら、自分もちょっと挑戦してみようかなっていう勇気を与えられたらいいなって思っています」。北海道大から初となるプロ野球選手へ、育成指名でも大歓迎だ。運命の日は26日に迫っている。