強豪女子選抜チームが“解散”しないワケ 他県との決定的違い…未来開く「一貫」指導

栃木スーパーガールズの選手たち【写真提供:フィールドフォース】
栃木スーパーガールズの選手たち【写真提供:フィールドフォース】

今夏のNPBガールズトーナメントで2度目の頂点「栃木スーパーガールズ」

「NPBガールズトーナメント」が、小学生女子軟式の日本一を決める全国大会としてNPB(日本プロ野球機構)とJSBB(全日本軟式野球連盟)の共催で始まったのは2013年。それから10年余を経た現在、高校女子硬式の夏の全国決勝は甲子園球場で開催されている。また西武、阪神、巨人のNPB3球団が女子硬式のクラブチームを運営。一般の小学生の軟式野球でも、近年は女子の数と活躍が際立つ。全国大会やそのレベルでも、複数の女子選手が主力やレギュラーというチームが、まるで珍しくない。

 ただし、そうしたことだけで女子野球の興隆を断じられない。そう指摘するのは、今夏のガールズトーナメントで2年ぶり2回目の優勝を果たした「栃木スーパーガールズ」(以下、栃木ガールズ)の川村貴幸監督だ。

「決して女子が増えているわけはない。男子がかなり減っているから、女子が目立っちゃうだけだと思います」

 栃木ガールズは2013年に結成された栃木県の選抜チーム。川村監督は2年間のコーチを経て2015年に指揮官となり、2019年にガールズトーナメント初制覇。また、2014年には中体連の軟式野球部に所属する女子たちのクラブチーム「オール栃木」も結成。こちらも2015年から監督で、昨夏の全日本中学女子大会で初優勝に導いている。

 地元の作新学院高の女子硬式野球部で活躍するOGも多数。さらには澤田百華投手(読売ジャイアンツ女子チーム)ら、NPB球団傘下でプレーする選手も複数いる。

「正直、3月のWBC効果(侍ジャパン優勝による競技者増)というのは、私の周辺ではあまり感じていません。やはり、男子が増えて、そこに女子もついていく感じでないと……。NPB球団のクラブチームも全12球団に広がってくれると、子どもたちの夢もより広がると思いますけど」

栃木スーパーガールズ・川村貴幸監督【写真提供:フィールドフォース】
栃木スーパーガールズ・川村貴幸監督【写真提供:フィールドフォース】

多くの保護者が継続を要望…監督も「中学へ良い形でつなげてあげたい」

 そう語る川村監督は、日光高まで自身もプレーした。職業は消防士で、長女が野球を始めてから指導者に。小・中学校の2チームを掛け持って9年目に入るが、コーチ陣は高校時代の同級生と後輩たちで風通しも良く、いつでも一枚岩だという。

 栃木ガールズは毎年5月のセレクションを経て6月から始動。選手は地元の自分の所属チームでも活動するため、練習は6月中は土曜のナイターのみ。7月に入ると、日曜日に他県のチームと練習試合を重ね、8月のガールズトーナメントへ向かう。

 ここまではどの都道府県も同様だが、栃木ガールズが他と決定的に異なるのは、夏の全国大会をもって解散しないことだ。

「継続してほしいという保護者の要望も多く、私としても中学へ良い形でつなげてあげたい。そこで去年からは、夏の全国大会以降も翌年の3月までは、週末の試合を中心に活動しています」

 中学のオール栃木を立ち上げたのも、手塩にかけた選手たちを送り出すには、受け皿の数も質も心許なかったからだという。

 小・中一貫の指導体制がある栃木は先進的で、近年の好成績ともリンクする。ただし、それも限られた指導陣の負担と努力によるところが大というのが実情のようだ。

 次回は日本一に輝いた選手たちの声やプレーも踏まえて、栃木ガールズの活動と強さの秘訣に迫りたい。

〇大久保克哉(おおくぼ・かつや)1971年生まれ、千葉県出身。東洋大卒業後に地方紙記者やフリーライターを経て、ベースボール・マガジン社の「週刊ベースボール」で千葉ロッテと大学野球を担当。小・中の軟式野球専門誌「ヒットエンドラン」「ランニング・マガジン」で編集長。現在は野球用具メーカー、フィールドフォース社の「学童野球メディア」にて編集・執筆中

(大久保克哉 / Katsuya Okubo)

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