球場外で行われる“本当の争奪戦” 駐車場に一列に並ぶスーツ…選手を待つ次なる道
トライアウトの出番が終わって球場を出た選手に声をかける人たち
「12球団合同トライアウト」が15日、鎌ケ谷スタジアムで行われた。元阪神・高山俊外野手ら59人が、次の就職先を獲得すべく猛アピールを繰り広げた。スタンドにはNPB、独立リーグ、社会人チームなどのスカウト159人が視察したが、終了後の駐車場では早くも“争奪戦”が始まっていた。スーツ姿の人々が一列になり、選手が出てくるのを待っていたのだ。
午前10時。気温12度で太陽も出ていない曇り空のグラウンドでシート打撃が始まった。ここ数日で気温も一気に下がり、選手たちは短い時間の中で入念にウオーミングアップを行っていた。2安打2四球の高山や元ロッテ・福田秀平外野手はフェンス直撃の二塁打を放つなど、実績を誇る選手の活躍が目立った。
トライアウトは、自身の出番が終わった選手から球場を去る。そのため打者は終了後にほぼ一斉に出てくるが、早々に登板を終えて午前中に帰る投手も。サインや写真撮影を求めるファンの姿が一日中、球場正面の玄関付近に集結していた。
そして道路を挟んで向かい側にある関係者駐車場では、スーツで紙袋を持った人が列をなしていた。紙袋には外資系の生命保険会社や有名人材派遣会社、中にはスポーツジムの名前が書いたものまで。そして、トライアウトが終了して車に乗り込む選手たちに声をかけていた。
社会人チームの勧誘ではない。選手たちには「営業職として……」「現場でこういった仕事を……」と野球とは違う仕事の説明を行う。プロで培った精神力や経験値を生かしてほしいという、“第2の人生”の誘いだった。選手たちは沢山の紙の封筒を手に、球場を後にする。
トライアウトを受ける選手は、NPBや独立リーグ、社会人など、場所は違えど「野球を続けたい」という強い思いを持って受けている人がほとんど。そんな中、野球以外の仕事の勧誘を受けるのは、本人たちにとって望むところではないかもしれない。それでも、“元プロ野球選手”という肩書は武器になる。本当の争奪戦は球場の外で起こっていた。
(川村虎大 / Kodai Kawamura)