野球で成功する選手の“共通点” 鷹新任コーチ指摘…技術は「意識次第で向上できる」

ソフトバンク4軍コーチに就任した川越英隆氏【写真:高橋幸司】
ソフトバンク4軍コーチに就任した川越英隆氏【写真:高橋幸司】

ソフトバンク4軍コーチ就任の川越英隆氏…1年間小・中学生を指導

 プロ13年間、オリックスとロッテの2球団で通算298試合を投げ、54勝をマークした川越英隆氏。現役引退後はロッテで11年間投手コーチを務め、今をときめく佐々木朗希や種市篤暉らを育て上げた。2022年限りで退団後の1年間は、横浜市内で野球塾を開講し小・中学生を指導。そして今秋、ソフトバンクの4軍投手コーチに就任。人を育てるのは実に難しいものだが、指導法にはどんなポリシーがあるのだろうか。

 川越氏が影響を受けた指導者は誰なのか。真っ先に挙げたのは、オリックス時代の恩師、仰木彬監督だ。「プロ入り(1999年)した時の監督が、仰木監督でよかったと思います。人を観察する能力、人を動かす能力に長けていました。2005年に仰木監督が再就任した時にも、その手腕の高さを再認識しました」。

 川越氏がプロ生活で最も印象深いと語るのが、1999年4月6日、プロ初登板初先発の近鉄戦(大阪ドーム=現・京セラドーム)。1回1/3を2失点で敗戦投手となった。「なぜか、スパッと変えられたんですよ」。オープン戦で好投し、自信満々でマウンドに上ったが、本番の雰囲気に呑まれて出鼻をくじかれた。将来性豊かな新人が自信を喪失しないよう、仰木監督は早めに交代させたのかもしれない。結果的にその年11勝を挙げ、パ・リーグから特別表彰を受けた。

 仰木監督は、性格や個性を大事にしながら、会話でモチベーションを上げる。だから相性で打線を組むこともあるし、失敗してもまた次の試合で使うこともあった。それが「仰木マジック」といわれるゆえんだ。

 また、川越氏は「優れた指導者」として、ロッテ時代にともに投手コーチを務めた小谷正勝氏の名も挙げた。三浦大輔(現・DeNA監督)や内海哲也(巨人ほか)らを育成した名伯楽だ。「育った環境や家族構成における性格などを考慮しつつ、選手が困ったとき手を差し伸べてあげていました。いつもちゃんと人を見ていて、的確なアドバイスを施すのです」。

キャッチボールでも技術向上は可能…大切な“意識の持ち方”

 一般的に指導法は「長所を伸ばす」と「短所を矯正する」に大別される。川越氏は「個人的には、長所を大きく伸ばすことによって、短所をカバーするぐらいのほうがいいと思います」と語る。仰木監督もそうだった。短所の矯正ばかりにとらわれると、長所も伸びなくなる場合もある。

 また、川越氏はこれまでのコーチとしての経験値から「プロで成功する選手の共通点」を2つ挙げた。「アドバイスを素直に聞いて、その中から自分に合ったものを取捨選択できる選手」「単調な練習でも、自分のためになることをコツコツと努力できる選手」。裏返せば、この2つともできない選手は、成功しない可能性が高い。

 昨今の野球界では、トラックマンやラプソードなどの機器で取得した「投球成分」(球速、回転速度、回転数、回転軸、ホップ率など)をタブレットなどの端末機器で確認。主観的な感覚を、客観的な数字と照らし合わせながら微調整し、投げ込む練習がトレンドである。

 しかし小・中学生は、いいフォームでの投げ方や打ち方の「基本」を覚えることが何よりも重要だ。川越氏はこの1年間、月曜日は小・中学生の野手、火曜日は小・中学生の投手を指導し、他にパーソナル指導も行ってきた。

「練習で100球投げるより、試合で1イニング投げたほうが体力も技術もつくものですが、一方で、意識の持ち方1つで、キャッチボールでも技術を向上させることができます。練習でできることは、試合でもできるはずです」

 練習1つ1つの“意識の持ち方”から、野球の普及振興のため尽力してきた川越氏。次は再びプロの現場で、その大切さを伝えていくつもりだ。

(石川大弥 / Hiroya Ishikawa)

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