チアより人気劣る「選手は可哀想」 修羅場生む抱き枕NG…台湾の“異常な熱情”
チアの弁当やドリンクまで…選手グッズ以上の売り上げ
球場を盛り上げ、一体感を生み出すチアガールたちは、ファンにとって親しみやすい存在でもある。最近ではきつねダンスで日本ハムの「ファイターズガール」が世間の注目を浴びたが、こと台湾では選手以上の人気を誇る球団の“アイコン”。日本とは違うチア熱を帯びているという。
16日に開幕した「カーネクスト アジアプロ野球チャンピオンシップ 2023」。東京ドームのスタンドで異彩を放っていたのが、チャイニーズ・タイペイのチアガールたちだった。内野席に設置された特設ステージで踊る彼女たちに、一部のファンは試合そっちのけで釘付けだった。
6球団が加盟する台湾プロ野球(CPBL)で、チアに注がれる眼差しはすさまじい。楽天モンキーズのチア「楽天ガールズ」も例外ではなく、メンバーの中にはインスタグラムのフォロワー180万人超を誇る林襄(リン・シャン)もいる。日本とは異なる特殊事情を、今季楽天ガールズのチアマネジャーを務めたスタンリーさんが明かしてくれた。
球場のグッズショップには、選手ゆかりのアイテムだけでなく、楽天ガールズメンバーの商品も多数販売されている。タオルなどの定番から、メンバーの姿がパッケージにプリントされた弁当やドリンクまで……。タオルの売り上げは昨年より20%以上増加し、今年韓国から加入した人気メンバー、イ・ダヘのタオルは数千枚を売り上げたという。
チアの取材優先…中断された選手も理解「大丈夫ですよ。行ってきてください」
10月7日には、楽天ガールズが歌うシングルCDが発売された。プロの歌手よりも売れており「グッズの売り上げは、選手よりガールズのほうが上です。選手は可哀想」と、スタンリーさんは苦笑いを浮かべる。過熱する人気は、グッズ製作にも影響している。「抱き枕などが家にあったら、男性ファンの恋人に『これなに?』と言われてしまう可能性があります。そのため、ボールペンなどオフィスでも使えるものが多いです」と、“修羅場”を事前に回避している。
日本からも彼女たちを目当てに球場を訪れるファンがいる。10月上旬に本拠地で行われた試合でのこと。初めて台湾を訪れたという上山高仁さんは「リン・シャンを見たくて来ました。あの愛嬌がたまりません。よく見るために、眼鏡も作り変えてきました。観光地の九フン(にんべんに分)にも行きましたが、リン・シャンがメインです」ときっぱり。一緒に来た大山貴広さんとともに張り切っていた。
“選手が主役”の日本とは異なる実情は、現地での取材の一場面にも表れた。今季打点王を獲得した廖健富(リャオ・ジェンフー)捕手のインタビュー中、球団担当者が急いでやってきて「今、リン・シャンの取材ができますから、そちらに行きましょう」と、取材を中断。まさかの事態にも、廖は「大丈夫ですよ。行ってきてください」と快く送り出してくれた。優先順位は、選手も理解しているようだった。
スタンリーさんは「日本は球場に選手を見に行くと思いますが、台湾はチアと選手両方です」と説明。ただひとつ変わらないのは、球場が盛り上がっているということ。「台湾と日本でスポーツの文化は違いますが、好きなチアや選手を見つけて、日本から球場に足を運んでくれたら嬉しいです」と呼びかけた。