夢潰えた3年前も「取り戻すことができた」 甲子園でけじめ、前に進む“悲劇の世代”

「あの夏を取り戻せ~全国元高校球児野球大会~」が甲子園で開催された【写真:橋本健吾】
「あの夏を取り戻せ~全国元高校球児野球大会~」が甲子園で開催された【写真:橋本健吾】

「あの夏を取り戻せ~全国元高校球児野球大会~」が甲子園で開催

 夢を絶たれた元高校球児たちが、3年経った今、ようやく新たな一歩を踏み出した。新型コロナウイルスの感染拡大で、選手権大会が中止となった2020年。当時の3年生が中心の大会「あの夏を取り戻せ~全国元高校球児野球大会 2020-2023~(以下「あの夏」)」が29日、甲子園で開催された。発起人の武蔵野大3年・大武優斗さんは「あの夏は取り戻すことができました。今から“あの夏”を超えたい」と強く誓った。

 元球児たちが“奪われた夏”を取り戻しに来た。全国の42チーム約700人が参加した今大会。ブラスバンドの音が響く中での入場行進、全チームが5分間のシートノックを行い、特別試合として佐久長聖(長野)-松山聖陵(愛媛)、倉吉東(鳥取)-関大北陽(大阪)の2試合が行われた。

 昨年8月に同大会のプロジェクトを発起人として立ち上げた大武さんも、2020年当時に城西大城西(東東京)3年の野球部員だった。1年を超える準備期間を経て、たどり着いた夢舞台に「きょうの為だけに時間を費やして、ここまできて。楽しそうにノックを受けている選手を見て、僕たちのプロジェクトは意味があったと思う」と喜びの声を口にした。

 3年前は甲子園大会の中止が決まり、目標を失ったことで“悲劇の世代”、“コロナ世代”と語られることが多かった。「僕たちはコロナ世代じゃなく、あの夏世代。ネガティブなイメージが多かったですが乗り超えたことで強い絆が生まれ、多くのことを得ることができました」。勝ち負け問わず、純粋にプレーを楽しむ選手たちの姿を見つめ「苦労したことをもう忘れてしまった。それぐらいきょうが幸せ」と、笑顔を見せた。

 選手宣誓を行った聖隷クリストファー(静岡)OBの大橋琉也さんも「今、こうやって甲子園に立てて、堂々となんでもできた。選手宣誓もできたことはあの夏を超えられたかなと思う」と胸を張る。グラブ、スパイクは高校時代のものを持参し、叶わなかった聖地でのシートノックを心から楽しんだ。

 大会は続き30日と12月1日は甲子園を除く、兵庫県の5球場で計22試合の交流試合を行う。母校のユニホームに身を包み、3年前の悔しさにけじめをつけた元球児たち。大武さんは「きょうからまた新しい夢や目標に進んでいきたい」と前を向く。この日を境に止まっていた時計の針は再び動き出していく。

(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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