西岡剛から謝罪「申し訳ない」 同点生還のはずが敵軍歓喜…突如終わったシーズン
38年ぶりの阪神優勝、元外野手の田上健一氏も祝福
今季38年ぶりとなる日本一に輝いた阪神は、前回優勝の1985年以降、3度日本シリーズに出場したが、頂点には届かなかった。特に、前回の出場だった2014年は後味の悪い終戦だった。ソフトバンクとの第5戦(ヤフオクドーム)、対戦成績1勝3敗と負けられない試合で、阪神は1点ビハインドの9回1死満塁から西岡剛内野手の守備妨害でゲームセットに。この場面でグラウンドに立っていた田上健一氏は「よく覚えています」と懐かしそうに話す。
阪神は1点ビハインドの9回、ソフトバンクのデニス・サファテ投手から3四球を選んで1死満塁とすると、西岡が一ゴロを放った。ボールは本塁封殺後に一塁へ送られるも、送球が西岡の背中に当たって守備妨害の判定が下され、試合終了となった。この場面で二走として、同点になったはずのホームに滑り込んでいたのが田上氏だった。
田上氏は1死一塁から四球を選んだマウロ・ゴメス内野手の代走で出場。この日が日本シリーズ初出場だった。「注目される一戦なのでワクワクという気持ちが大きかったですね。(和田)監督からも『大事な場面で行かせるから』と言われていました」。続く福留孝介外野手が四球を選んで満塁に。田上氏は二塁に進み、生還すれば逆転となるランナーだった。
守備妨害のシーンは田上氏には見えていなかった。三塁に到達すると、ボールが一塁ファウルゾーンを転々としている。「高代さん(三塁コーチ)が『いけいけいけ』って」。必死に三塁を回って本塁へスライディングし、両手を広げた。「よし同点だ!」。しかし、喜んでいるのはソフトバンクの選手たちだった。
困惑の最中、ドームには日本一を祝福する金色の紙テープが舞っていた。「一塁がアウトってどういうこと?」。和田豊監督が審判に抗議するも、判定は変わらず。やりきれぬままソフトバンクの胴上げを見つめていた。「白井球審からアウトと言われて、もう訳が分からず。ホームベース付近で立ってましたね」。
消化不良な形での終戦に、左翼スタンドのファンからは次々とメガホンが投げ込まれる異様な光景に。もちろん、敗れた阪神ロッカーのムードは重苦しかった。「凄い空気感でしたね」。西岡からは田上氏に「申し訳ない。悪かった」と謝罪もあったという。
悔しい終戦から9年、チームは日本シリーズを制した。優勝を決めた第7戦にスタメン出場した原口文仁内野手とは、同期入団にあたる。「今年はかなり観戦にも行かせてもらいました。嬉しいですね」。悲願の日本一を元虎戦士も喜んでいる。
(上野明洸 / Akihiro Ueno)