肩脱臼7度…元G盗塁王の願い「頭からはやめて」 強く伝えたい“駆け抜ける”意義
「青い稲妻」松本匡史氏が野球少年たちに心掛けてほしい走塁での意識
通算342盗塁をマークし、「青い稲妻」の愛称で1980年代プロ野球を代表するリードオフとして活躍した元巨人の松本匡史さんは、現在、首都大学リーグ2部に所属する玉川大学硬式野球部の監督を務めている。また、時には野球教室に出向き、小・中学生に走塁技術を伝える。球界の将来を担う子どもたちに向けて、「打ったら、しっかりと一塁ベースを駆け抜けることを意識してほしい」と語りかける。
巨人で11年間のプロ生活を送った松本さんは、1987年限りで引退後は巨人、楽天、BCリーグのコーチ・監督などを歴任。2020年から玉川大の臨時コーチ、2021年から監督となった。指導については、学生コーチを中心に選手たちの自主性を重んじるスタイル。試合中の盗塁も選手に判断を任せる「グリーンライト」にしているが、「行くべき時に行かない選手には、サインを出しますよ」と笑う。
1982、1983年に盗塁王を獲得。1983年に打ち立てたシーズン76盗塁は、今もセ・リーグ記録として輝く金字塔だ。そんな名リードオフが走塁に関して野球少年たちに訴えたいのは、「ヘッドスライディングはやらないでほしい」ということだ。
「体力的にも技術的にも、まだまだ基礎的なものができていない小・中学生が、勢いだけでプレーするのはリスクがあります。そこで大怪我をして、将来的に野球に影響が出たり、できなくなったりしたらかわいそう。だから、打ったらしっかり全力で走り、一塁ベースを駆け抜けることを心がけてほしいのです」
セーフになりたい一心で勢いのまま頭から滑り込もうとする行為は、ベンチを盛り上げる効果もあるかもしれないが、指や肩を痛めるリスクが非常に高い。「全力で駆け抜ける意識だけで、相手野手の焦りは十分に誘えますし、スローイングに力が入って悪送球でセーフになるということも起こり得ます」。
走る前から結果を気にせず「スタートを切る勇気を持って」
そう願う理由は、自身が怪我に苦しんだ経験があるからだ。早大2年秋の東京六大学リーグ戦、当時三塁手だった松本さんは、ベースカバーのいないガラ空きの塁に飛び込んでタッチにいった際、相手走者に腕の上に乗られて左肩を脱臼。以降、プロ入り後も含めて7度も脱臼を繰り返した。とっさのプレーが、大きな影響を後々まで残す危険性を身をもって知っている。
現役引退は33歳のシーズン。怪我さえなければ「もう少しやれたのでは」という思いは、今でもあるという。だからこそ、長く野球を続けるためにも、子どもたちにリスクの高い行為は可能な限り避けてほしいと望む。
盗塁については、何よりもスタートを切ることが大事だと語る。セーフかアウトかの答えは、次塁に到達した時に出るもので、走る前から結果を恐れる必要はない。「勇気を持ってスタートを切る意識を大切にしてほしい」。それもまた、大怪我を乗り越え前向きにプロ人生を駆け抜けた、“青い稲妻”が次世代に伝えたいメッセージだ。
(高橋幸司 / Koji Takahashi)
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