中学日本一は「高校野球と違う」 指揮官感じる“差異”…進路効果も「ないに等しい」

取手リトルシニアの石崎学監督【写真:伊藤賢汰】
取手リトルシニアの石崎学監督【写真:伊藤賢汰】

全国V5度…取手リトルシニア・石崎学監督が目を向けるのは「選手個々の成長」

 同じ監督であっても、中学野球と高校野球では大きな違いがあるという。茨城県の中学硬式野球チーム・取手リトルシニアの石崎学監督は今までに5度、チームを日本一に導いている。しかし、全国制覇しても「高校野球の監督と違って何も変わりません」と強調する。

 チーム結成の2007年から指揮する石崎監督は、全国大会で5度優勝しながらも、勝利至上主義とは程遠い考え方で選手と接している。日本一を成し遂げても「何も変わりませんよ」と笑う。

「指導者として勝ちたい気持ちは、チームを立ち上げた当初はあったのかもしれません。ただ、創設して3年目に全国大会で優勝して、日本一になっても、それまでと同じだと知りました」

 石崎監督は中学野球と高校野球には大きな違いがあると感じている。甲子園で優勝すれば、普段は野球を見ていない人も高校名や監督の名前を知る。昨夏の甲子園で優勝した慶応や2年前に頂点に立った仙台育英は、連日メディアで取り上げられ、両校の指揮官の経歴や発言内容も詳しく報じられた。石崎監督が語る。

「シニアで日本一になっても、ボーイズの中には取手リトルシニアの名前を知らないチームもあるはずです。まして、他のチームの監督に興味がある人はほとんどいません。選手も、シニアで日本一になったから進学や就職で有利になるケースは、ないに等しいです」

勝利以上に楽しみなのは選手の成長「能力高くなくてもストレス感じない」

 取手リトルシニアは、2年前から今年にかけては3年連続で全国大会の頂点に立った。チームとして結果を残していることに喜びは感じているが、「私たちが3年連続で日本一になっていると把握している人は、他のチームにほとんどいないと思います。大会で優勝するよりも、うちのチームで控えだった選手が高校以降で活躍する姿を見る方がうれしいです」と石崎監督は話す。

 取手リトルシニアでは体重や体脂肪、ジャンプ力や筋力、直球の回転数や変化球の変化量など様々な数値を定期的に測定している。とはいえ、石崎監督は記録した数字を他の選手や歴代のチームと比較することはない。

「年によっては選手の能力が高くない時もあります。でも、ストレスは感じないです。選手の伸びしろが多いほど、成長を感じられる楽しさがありますから。それぞれの選手の中で1か月前、半年前より計測した数字が上がっていたり、打球の飛距離が伸びたと感じたりした時は充実感があります。選手の成長を感じる機会が多いと、チームは自然と勝てるようになります」

 日本一経験者だからこそ、「全国大会で優勝しても何も変わらない」という言葉には説得力がある。石崎監督の目は全国の頂点ではなく、選手個々の成長に向いている。

(間淳 / Jun Aida)

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