日本ハムは「外から見る印象とだいぶ違う」 5年ぶり復帰で驚き…巨人とは異なる文化
巨人を昨季限りで戦力外となった鍵谷は育成で日本ハムに入団
昨季限りで巨人を戦力外となった鍵谷陽平投手は、育成選手として日本ハムに加入した。2012年ドラフト3位で入団した古巣に、巨人へトレード移籍した2019年途中以来、5シーズンぶりの復帰。33歳とすっかりベテランになって帰ってきた右腕は、若手の姿に驚いたという。
春季キャンプはファームで過ごし、前回在籍時とは顔ぶれも大きく変わった。「たいぶ選手が若いので新鮮ではあります」と話す鍵谷には、意外な発見があった。
「ジャイアンツ時代に見ていたファイターズと、復帰して中で見るファイターズはだいぶ違いました。言い方は悪いですけど若くてワチャワチャしている感じに見えていたんですが、みんなしっかりしている。レギュラーになりたいとかではなく、もっともっと先を目指して目標設定をして練習している感じがします」
この“目標設定”が新鮮に映った理由が、巨人との違いだ。「どちらがいいとか悪いとかではないですけど」と前置きしつつ「ジャイアンツってレギュラーになるのも凄く難しいから、まずそこに一生懸命になって練習している。ファイターズはまだレギュラーじゃない子も、何年後かを意識している。もちろん目の前のことに必死にならないと先がないので、それがどうなるかは分からないですけど、おもしろいですよね。3年後、5年後にどうなっていくのかは楽しみですよね」。
層が厚く、常に勝利を義務付けられた“球界の盟主”と呼ばれる巨人で、自身は2021年には59試合に登板するなど5シーズンを過ごした。「僕みたいな選手でも注目される。常に見られている意識と、それに伴う行動をしようという気持ち。ジャイアンツを経験できたのはいい勉強になりました」と振り返った。
「ファイターズ以外ならプレーヤーとしては(昨季限りで)終わっていた」
当然、重圧も大きかった。「シャットアウトをできるところはして」と自然とSNSや新聞にも目を通さなくなった。「大したことではなくても、嫌なことを言われたらやはり嫌。何を言われてもチームから必要とされればやるしかないから、なるべく集中できる環境を作っていました」と胸の内を明かした。
昨季はわずか13試合の登板。戦力外通告は「入団した時から1年1年クビっていうのは覚悟していたので……」と冷静に受け止めた。そして日本ハムが手を差し伸べてくれた。背番号は3桁でも、そこには鍵谷の強い決意がにじむ。
「正直、ファイターズじゃなかったら(育成では)やっていないです。この世界に残るにしても次の職業に就くにしても、切り替えるのは若い方が良い。でもファイターズに(ドラフトで)獲ってもらって6年半やって、それがあったからジャイアンツでもあれだけ投げられた。そう考えたとき、僕はファイターズに恩返ししきれていないなと思ったんです。一番いいのは支配下に上がって1軍の優勝に貢献することですが、それ以外のところでも僕が入ったことでファイターズにプラスアルファになればと思っています」
練習態度や、人としての姿勢もそうだ。鍵谷自身も入団当初、武田久、武田勝、田中賢介、鶴岡慎也ら手本になるベテランの背中を見て「プロ野球選手とは」を学んだ。それを次世代に受け継いでいくことも、古巣で成し遂げるべきことだと自覚している。
「ファイターズ以外なら、プレーヤーとしては(昨季限りで)終わっていたと思います。だから本当にやり切る、満足いく1年にしたいなと。納得して野球人生を全うできるために1年もらったと思っているので。それが1年になるか2年、3年になるかは分からないですけど、まずはこの1年、しっかり野球に打ち込みたいです」。悲壮感は全くない。帰ってきた北の大地で、使命を全うするのみだ。
(町田利衣 / Rie Machida)