好調でも1軍上がれず「試合出たかった」 巨人移籍は「プラス」…元ドラ1が描く虎退治
馬場皐輔はハワイV旅行出発5日前に現役ドラフトで指名された
巨人にとって阪神は、日本プロ野球が誕生してから常にライバルであり、倒さねばならない覇者であり、昨季6勝18敗1分と圧倒された天敵でもある。昨年12月の現役ドラフトで、6年間在籍した阪神から巨人に移籍した馬場皐輔投手は、“昨日の友”となった虎戦士たちにどう立ち向かうのだろうか。Full-Countのインタビューに応じ、胸中を明かしてくれた。
馬場が現役ドラフトで巨人に指名された昨年12月8日は、阪神のハワイV旅行出発のわずか5日前だった。「僕にとっては“卒業旅行”になりました。ジャイアンツさんには、入団会見を早めにしてもらいました」と明かす。東京・大手町の巨人球団事務所での入団会見は、あわただしくV旅行出発前日の12月12日に行われた。
阪神の昨季救援防御率は2.37。12球団トップを誇った。ハイレベルのチーム内競争の中で馬場の登板数は、2021年には44試合に上っていたが、翌2022年は7試合に激減。昨季も19試合にとどまった。調子が悪かったわけではない。昨季ウエスタン・リーグでは、28試合3勝1敗、防御率1.97と際立った成績を残していたが、1軍の層の厚さに阻まれていた。
「プロ野球選手は毎年が勝負で、どれだけ1軍の試合に出られるかが大事です。最近2年間は、もっと試合に出たいという思いがありました」と胸中を吐露。「(移籍は)自分の人生にとってプラスだと思います」と言い切った。
今季、巨人の一員として優勝に貢献するには、古巣の阪神を避けて通れない。「巨人は毎年日本一を目指しているチームなので、負けられない戦いが多くなってくると思います。前年度優勝チームに向かっていって、しっかり抑えたい。巨人軍の一員として、(阪神の打者の)インコースもガンガン攻めますよ」と強い口調で言う。
そんな馬場に、阪神で特に意識する打者は誰かと聞くと、「いません」と即答。その代わりに「機動力を使うチームなので、打者を意識するというより、塁上に出た時に意識することはあると思います」と語った。
「阪神はクイックだけでなく、相手の癖などを分析してくる」
昨季、阪神のチーム打率はリーグ3位の.247。チーム本塁打は、巨人(164本)の約半分の84本だった。それでいてリーグトップの555得点を挙げられた要因の1つは、リーグトップの79盗塁をマークした機動力にあった。昨季28盗塁でタイトルを獲得した近本光司外野手、リーグ2位の20盗塁をマークした中野拓夢内野手をはじめ、「代走も熊谷(敬宥内野手)、植田(海内野手)、島田(海吏外野手)とそろっています」と馬場は警戒を強める。
「僕は昨年までジャイアンツ戦に投げる時は、一発を打てる選手が多いので、打者をすごく意識していました。しかし、タイガースの野手の場合は、塁上に出した方が嫌です。一発を警戒しなければならない打者はそれほど多くありませんが、出塁を許すと、(盗塁などで)無死二塁を簡単につくられてしまいますから」と説明する。
そして、「僕自身、クイックの速さにはある程度自信がありますが、阪神はクイックだけでなく、相手の癖などを分析することを大事にしている。そういうチームの強さを、僕はわかっています」とうなずいた。阪神の特長、内情をよく知る馬場の存在は、やはり巨人にとって大きな戦力になりそうだ。
個人的な目標を聞くと、「今年は、60(試合)は投げます」とキッパリ。少し考えてから、「防御率は1点台」と付け加えた。「現にタイガースにはそういう投手がいて、僕は“やれている人”のピッチングを見てきましたから」と力を込めた。阪神では昨季、岩崎優投手が60試合に登板して35セーブ、防御率1.77。「60試合」には少々足りなかったが、2022年も湯浅京己投手が59試合で同1.09、岩崎も57試合で同1.96をマークしていた。
巨人浮上の鍵を握る馬場。恩返しの意味も含め、“虎退治”に懸ける思いはことのほか強い。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)