15年で17万人減も…中学軟式が“対策の1番地” 球界縮小阻止へ「熱い指導者必要」

群馬県中体連の指導者講習会に登壇した読売巨人軍野球振興部の倉俣徹部長【写真:高橋幸司】
群馬県中体連の指導者講習会に登壇した読売巨人軍野球振興部の倉俣徹部長【写真:高橋幸司】

硬式含め「約20万人維持を」…巨人野球振興部が中学部活を重視するワケ

 少子化に子どもの体力低下、教員の働き方改革、部活動の「地域移行」と、中学軟式を取り巻く環境が大きく変化する中、野球人口減少歯止めへ、垣根を越えた取り組みが行われている。2月上旬、群馬県前橋市で同県中体連の野球指導者114人を集めての講習会が開催され、読売巨人軍の野球振興部が講師役を務めた。登壇した倉俣徹部長は「一流選手が育つ環境面の上でも、プロ野球のファン層確保の上でも、中学軟式の競技人口は重要」と語った。

 倉俣氏は、地元・群馬の中学硬式の強豪、高崎中央ボーイズを率いる監督でありながら、県中体連と連携して軟式・硬式の交流戦を開催するなど、組織の枠を越えた交流に積極的に関わっている。

 この日は、球団OBの成瀬功亮、北之園隆生の両アカデミーコーチと共に、「中学生世代の野球指導」「昨今の野球理論について」をテーマに講演。選手の集中力を途切れさせない「サーキット形式」練習や、中1の初心者には難しいキャッチボールなどの動きをポイントごとに分けて指導する「分習法」など、実用性の高い内容を参加指導者に伝えた。

 巨人野球振興部は、東京都でも中体連と協力し、アカデミー講師を派遣しての野球教室を都内各地で実施。その回数は90回にも上る。それだけ支援に力を入れている理由は、学童野球とともに、中学軟式の子どもたちを減らさないことを、競技人口対策への「1丁目1番地」(倉俣氏)と位置付けているからだ。

「中学硬式の選手数は現在、全国で5万2000人ほどですが、6万人以上には増えないでしょう。それは、専用グラウンドを持たないチームが多いからです。一方で、中学軟式の選手数は約13万人。2008年には30万人いましたが、少子化を考慮すればその規模には戻ることはない。硬式で6万人、軟式で14万人、計20万人規模があれば、一流選手が育つ環境面でも、プロ野球を見に行くファン層確保の面でも、維持していけるのではないかと考えています」

講習会には球団OBの成瀬功亮、北之園隆生の両アカデミーコーチも登壇【写真:高橋幸司】
講習会には球団OBの成瀬功亮、北之園隆生の両アカデミーコーチも登壇【写真:高橋幸司】

中学生には“熱い先生”が必要「自分はここにいるぞ、と示すことが大事」

 専用の練習場所がある中学硬式チームは一部強豪に限られるが、中学軟式は学校のグラウンドもあり、硬式に比べて用具が安いなど金銭的にも取り組みやすい。そもそもの選手数も多く、野球人口を維持・微減にとどめる意味でも、また、野球を見るファンを含めた“関わる人”の数を維持するためにも、大きな鍵を握る。

 一方で、公立の中学部活は、教員の長時間労働などを背景に、活動を地域のクラブや民間事業者などに委ねる「地域移行」が進められている改革期。外部指導者の人材確保など難しい問題にも直面している。

 その中で倉俣氏が理想と考えているのは、既存のノウハウやグラウンドを活用した部活動の“地域クラブチーム化”だ。

 地域移行後も、希望する教員は申請をすれば、時間外労働の範囲内でチームから報酬をもらい指導ができる。公立の教員はどうしても他校への異動が伴うが、「気持ちが熱い先生がいないと、選手たちのモチベーションも下がります。だからこそ、ずっと“い続ける”ことが必要。他の学校に移ったとしても、週末はクラブチームの指導者として『自分はここにいるぞ』と示すことができれば、選手も集まりやすい」と力説する。

 巨人野球振興部の中学軟式へのアプローチには、他球団のオーナーも共鳴しているという。プロ・アマ、連盟・団体の垣根を越えた支援が広がれば、“地域クラブチーム化”や、教員が外部コーチとして携わる上での予算など、サポートにつながる可能性も高まるだろう。

 倉俣氏が講演で「吾十有五にして学に志す」という孔子の言葉を引用したように、中学生年代が将来の夢を志す上でも、教師・指導者の影響力は大きい。既存の枠組みにとどまることなく、教師も生徒も、希望する者が野球・スポーツを諦めることなく、長く関わることができる態勢が構築されることを願いたい。

(高橋幸司 / Koji Takahashi)

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