高かった言語の壁「何を言っているのか」 台湾の至宝…日本での“苦難”「距離感あった」
元日本ハムの王柏融が語るNPB生活「一番表現したいことが伝わらない」
鳴り物入りで入団したが、言葉の壁が重くのしかかった。昨季まで日本ハムでプレーした王柏融外野手は今季から地元台湾に戻り、新興球団「台鋼ホークス」に加入した。日本では5年間で打率.235、15本塁打、97打点。「神様からのテストだと思っています」。決して納得のいく成績ではなかった。
2015年のCPBLドラフト1巡目(全体4位)でLamigo(現楽天)モンキーズに加入して以降、4シーズンで573安打、86本塁打、通算打率.386という圧倒的な成績を残し来日した。2017年には台湾人として初のリーグ3冠王に。ただ、慢心は決してなかった。
「台湾と日本では野球の文化が違うので、ゼロから始まるのかなと思っていました」。文化に慣れようと必死に食らいついたが、打率は1年目の.255がキャリアハイ。長打力も影をひそめ、本塁打は2021年の9本が最多だった。
苦しんだのは言葉の壁だった。専属通訳はもちろんついたが、ポジションは外野手。「キャッチングに集中しようと思っても、外野手はチームワークが大事。外野が集まっても何を言っているのかわからないことも多く、難しかったです」。すでに西川遥輝、大田泰示、近藤健介らがレギュラーとして台頭。聞きたいのに聞けないもどかしさが常にあった。
「通訳が入っていると自分が一番表現したいことが伝わらないこともありました。チームメートとの距離感がありました」
チームメートへは感謝「ナカタさんはご飯に連れて行ってくれた」
それでも、チームメートや通訳、コーチには感謝しかないという。「野手の皆さんにはとても手伝っていただきました。ナカタさん(中田翔)はご飯に連れて行ってくれて。ありがたかったですね」。
また、日本野球の良さに気付くこともできた。驚いたのは練習量と綺麗好き。「日本の選手は現状に全く満足しません。そして、どんなにいい選手でも靴などを整理整頓して帰ります」。自身が今でも欠かさぬ意識だ。
今年で30歳という節目を迎え、祖国に戻ることを決断した。「30歳にもなり、選手としての寿命も限られてくる。出場する“舞台”が欲しいと思って帰国しました」。2023年は育成契約も経験。家族にプレーしているところを1日でも1試合でも多く見せることも自身の役目だと思った。
まずは台湾で結果を残すことが第一だが「また機会があれば、NPBでプレーしたいです」とも。日本での悔しさを忘れず、新たな第一歩を踏み出した。
(川村虎大 / Kodai Kawamura)