グラブもバットも不要…世界に急拡大の「新・野球型競技」 日本一投手もハマる“魅力”
日大三で甲子園優勝投手…吉永健太朗さん「ベースボール5はお金をかけずに始められる」
野球はとにかく使用する道具が多い。グラブ、バット、スパイク、帽子、ユニホーム上下、ベルト、ソックス、アンダーソックス…。一式をそろえるだけでも、十数万は優にかかる。さらに近年の物価高も加わり、野球を始める敷居がどんどん高くなっていることも、競技人口減少の一因となっている。
そんな状況の中、野球、ソフトボールに次ぐ新たなベースボール型競技が注目を集めている。2018年に世界野球ソフトボール連盟(WBSC)によって考案された、1チーム男女混合5人制、5イニング制で行う“手打ち野球”の「Baseball5(ベースボール5)」だ。
グラブやバットは不要で、使用する道具は専用のゴムボールのみ。リーズナブルに始めることができるため、80カ国以上の国や地域で急速に広まりを見せている。
「こどもの日」の今月5日。東京・町田市の鶴間公園内で行われた「南町田ファミリースポーツフェスタ」で、ベースボール5の体験会が開かれた。日大三のエースとして2011年夏の甲子園で優勝を果たした吉永健太朗さんが講師として招かれ、未就学児や、小学校低学年の子どもたちに、ボールを投げ、打つことの楽しさを伝えていた。
「本当は自分が運営しているベースボール5のチーム(Hi5Tokyo=ハイ・ファイブ・トウキョウ)の試合があったんですけど、こういったイベントも大切なので、来ちゃいました。子どもたちに教えているのは慣れていますけど、僕のチームでは未就学児は教えていないので、小学生と交ぜてやるのは難しかったですね」
五輪競技への“追い風”も…「まずは子どもたちに興味を持ってもらうことが大事」
吉永さんは、早稲田大から、JR東日本に進んだ後、2019年限りで現役を引退。現在はオンラインなどを利用した投球指導や、自身もその魅力にはまり、昨年から始めたベースボール5を行いながら、野球の普及活動にも力を入れている。
「ベースボール5は、グラブやバットも使わないので、お金をかけることなく始めることができます。子どもたちが野球に興味を持ってもらう“入り口”としては最適です」
ベースボール5は、2026年(新型コロナの影響で2022年から延期)にダカールで行われる夏季ユース五輪の公式種目に採用。初の男女混合競技として、将来的には五輪の公式種目として追加される可能性も秘めている。破竹の勢いで成長を続ける新競技の存在は、野球にとっても追い風であることは間違いない。
「ベースボール5を取っかかりに、競技をそのまま続けてもいいし、野球に転向してもいい。まずは子どもたちに興味を持ってもらうことが大事だなと思っています」
野球とともに育ち、高校、大学で日本一投手となるなど、輝かしい実績を収めてきた吉永さん。その恩返しも込め、いろいろな普及の形を模索していきながら、ボールを手にする子どもたちを増やし、裾野拡大に貢献していく。
(内田勝治 / Katsuharu Uchida)
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