コロナ禍で生まれた“青春タッグ” 明徳義塾の背中を押す綺麗なメロディの正体
明徳義塾を“アシスト演奏”
明徳義塾(高知)は12日、甲子園球場で行われた第106回全国高校野球選手権の2回戦で、鳥取城北に7-0と圧勝。同校の吹奏楽部は現在数人しかいないそうで、大阪学芸高の吹奏楽部員、約80人がアルプス席に駆けつけ、新型コロナウイルスの影響が色濃かった2021年夏以来、3年ぶりの“アシスト演奏”で盛り上げた。
主将、平尾成歩内野手(3年)は試合後、「僕は今まで、あれほど甲子園らしい、大きなブラスバンドの演奏を聞いたことがありませんでした。今日は大阪学芸高校さんと明徳のOB、OGの方々を合わせて、約120人が来てくださったと聞いています。演奏と歓声のお陰でワクワクしましたし、力以上のものが出せたと思います」と感謝した。
明徳義塾と大阪学芸高の出会いは、2021年夏の甲子園大会出場時にさかのぼる。当時はまだコロナ禍で、開幕後に宮崎商と東北学院(宮城)の選手に陽性者が判明し、出場辞退(不戦敗)を余儀なくされたほどだった。野球部員はともかく、高知から吹奏楽部など大人数の移動は避けたかった。そこで、大阪府吹奏楽連盟の紹介で、大阪学芸高に声がかかったのだという。
吹奏楽部の顧問で指揮者も務める井上雄太さんは「2021年当時も私が引率して甲子園に来ました。ちょうどコンクールの日程と重なり、メンバーに入っていない生徒による編成でしたが、非常に貴重な経験をさせていただきました。その恩返しの意味も含め、今の部員たちにも経験させてあげられたらいいなと考えていました。今回お話しをいただいた時には『喜んでやらせていただいます』とお返事しました」と経緯を説明する。
3年生部員の高橋美乃里さんは「すごく楽しかったです。(アルプス席での演奏は)初めての経験でしたし、井上先生を通して、明徳の選手たちが日頃からどれだけ熱心に練習しているかを聞いていたので、チャンスや点を入れた時に盛り上がれることがうれしかったです」と喜んだ。
今年は明徳義塾吹奏楽部のOB、OGらと共同演奏。ブラスバンドの周囲で、ベンチに入れなかった控えの野球部員たちがユニホーム姿でグラブを構え、打球から守ろうとしている姿も印象的だった。
井上さんは「今日は少し急なタイミングのお話だったので、ウチの吹奏楽部員114人のうち80人の参加にとどまりましたが、次の試合には全員で来るつもりです」と力を込める。明徳義塾の次戦は16日、関東第一(東東京)との3回戦と決まった。ブラスバンドを通しての高知と大阪の青春タッグはまだ続く。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)