監督から「メンバーに考えていない」 神村学園エースに課された“条件”…苦悩の3か月
神村学園の今村拓未投手が甲子園で2戦連続完投勝利
エースになるための“絶対条件”があった。第106回全国高校野球選手権大会は15日に大会第9日が行われ、第1試合で神村学園(鹿児島)が中京大中京(愛知)に4-3で勝利した。先発を任された今村拓未投手(3年)は134球を投げ、8安打3失点の粘投で9回を投げ切った。そこには完投にこだわった深い理由が隠されていた。
樟南との鹿児島大会決勝、木更津総合(千葉)との1回戦に続いての完投勝利。エースの名にふさわしい活躍を見せている今村だが、ここまでは苦しい時期が長かった。昨夏の甲子園では市和歌山との2回戦に先発も、1回持たず降板。今春の選抜大会ではリリーフに回った。その後の九州大会ではメンバーからも外れた。
調子の上がらない左腕を見て、小田大介監督は夏までの3か月間で“ある条件”を与えた。「『完投できる体力、気力を付けられないと夏のメンバーに考えていないから』とはっきり伝えました」と、あえて厳しい言葉を投げかけて奮起を促した。それほど完投にこだわったのは「甲子園で勝つには、今村しかいないと思っていたから」と明かした。
今村はこの“通告”からの3か月を「とてもきつかった」と振り返る。全体練習に入るのはノックくらいで、その他の時間は、自分で考えた体幹中心のメニューをひとりで黙々とこなした。練習試合での登板はあったが「まだまだ信頼されていないと感じる時期もありました」と本音を漏らす。
苦しみながらも努力は実を結んだ。練習試合などで結果を残し、背番号「1」を勝ち取ると、鹿児島大会では20回2/3を投げて無失点。決勝では完封し、成長をした姿を見せた。この日も粘り強く投げ、134球で完投した。
この成長に小田監督は「信頼しかしていませんよ。彼がその3か月を本当に頑張った証拠だと思うので、エースとして頑張ってほしいと思います」と笑顔で感謝を口にした。
「完投は監督さんに信頼されている証拠なので嬉しいです」。今ではあの3か月に感謝している。悔しさを自信に変えたエースは「次の試合も完投します」と力強く宣言した。
(木村竜也 / Tatsuya Kimura)