入団前に「肩も肘もボロボロ」 鉄腕に告げられた事実…選手に伝える“勘違い”の経験
鷹・奥村政稔コーチ…4軍からスタートした指導者のキャリア「とにかく会話」
現役時代の経験を生かして、若鷹と向き合っている。ソフトバンクでは今季から4軍が新設された。指揮を執る斉藤和巳監督のもと、選手と真っすぐに向き合っているのが奥村政稔4軍投手コーチ補佐だ。入団前に言われたまさかの一言が、若手たちを指導する上でも大きな道標となっている。
奥村コーチは大分県・中津市出身。中津商から九州国際大に進むも、中退して2013年に三菱重工長崎に入社した。2018年ドラフト7位でソフトバンクに入団。通算で21試合に登板して0勝1敗、3ホールドという成績に終わり、昨シーズンオフに戦力外通告を受けて指導者に転身した。
大切にするのは「会話することです。日々の何気ない会話」と言う。選手と数多く言葉を交わしていれば、モチベーションの低下や体の異変にもすぐに気づくことができる。「(大野)稼頭央とかめちゃくちゃ話しますよ。どういう意識でやっているのかわかるように、見て、話をしていかないといけない」と自らに言い聞かせる。「年齢も他のコーチに比べれば(選手と)近いですし、とにかく会話はしようと思っています」と、アニキのような存在としても若手に寄り添っている。
ドラフトに指名されて待望の入団も…メディカルチェックで“発覚”した自分の状態
奥村コーチは「気をつけるのは怪我です」と頷く。現役時代の2022年9月16日、楽天戦で予告先発となっていたが、右肘を負傷して登板を回避。わずか2週間後の同30日に「鏡視下関節形成術」を受けたことが発表された。当時の痛みについて「前兆はもう、入団の時です」と語り出す。投げっぷりの良さが最大の持ち味だったが、プロの世界に飛び込んだ時には「ボロボロ」と言われるほどの状態だった。
「社会人の時、めっちゃ投げていたし、自分のことを鉄腕やと思っていたんです。それで入団前にメディカルチェックを受けたら『肩も肘もボロボロですね』って言われて、『あ、そうなんや』って驚きました。無敵だと思っていたし、痛みには強い方だったんですけどね。この世界ってアマチュアと違って、1試合投げた疲労度が全然違うんだなって」
だからこそ、指導者となった今は「怪我をするかもしれないから、全部が全部(選手のハードな練習を)止めているわけではないですけど、そういうところは敏感に。自分のように、他の選手もそうなるかもしれない。感じ取っていかないといけないです」と心掛けている。後悔だけはしないように、選手とのコミュニケーションは絶対に欠かさない。
(竹村岳 / Gaku Takemura)