打撃スキルでよく聞く「割れ」とは? 好打者に必須…緩急に負けない“体勢作り”

投球とタイミングの合う下半身の使い方とは(写真はヤクルト・村上宗隆)
投球とタイミングの合う下半身の使い方とは(写真はヤクルト・村上宗隆)

プロ含め年間2000人指導の依田徹平氏推奨…投球とタイミングを合わせるドリル

 打撃で一番大切なポイントは「タイミング」を取ること。ティー打撃やマシン打撃で結果を残せても、実戦の投手は同じテンポで投げることはない。プロ、アマを含め年間2000人を指導する「BASEBALL FUTURE」の代表・依田徹平さんは「打席ではなるべく、受け身にならない体勢で挑むことが大事」とアドバイスを送る。

 打撃の9割はタイミングで決まるという。一流のプロ野球選手たちも「どれだけいいスイングができても、タイミングが合わないと結果は残せない」と断言するほどだ。相手投手はストレートや変化球に加え、クイックを使い“攻め”の投球をしてくる。打者は常に“受け身”になるため、早めに準備をし、打つ体勢をつくっておく必要がある。

 バッティングのタイミングとは、最終的に、体重移動のタイミングをいかにピッチャーに合わせられるかが重要だ。当然、打つ準備が早すぎても、遅すぎてもいけない。普段の練習でもタイミングの意識を取り入れる方法は、いくつか存在する。

 その1つが、右打者を例にとると、左足を上げる際に、その足で円を描くような“遊び”を入れるドリルだという。ポイントは、上げた足をすぐ前にステップするのではなく、ホームベース側に回してから投手側に運ぶこと。そして、軸となる右足の股関節にしっかりと体重を乗せて固定し、左足を地面に早く着けないこと。これにより「間ができ、“割れ”を作ることにもつながりやすくなります」と説明する。

「BASEBALL FUTURE」の依田徹平氏【写真:伊藤賢汰】
「BASEBALL FUTURE」の依田徹平氏【写真:伊藤賢汰】

野球用語で“割れ”とは「捻転差」…強さと速さを生むスキル

 まずは、体の前にボールやケースなどの物を置き、それに当たらないようにしながら足を回してみる。シンプルな“制約”を設けることで、より効果的になるという。慣れてきたら置きティー打撃へと移行していく。

「軸足の股関節に体重を乗せ、体の突っ込みを抑えることで、変化球やコースにも対応できる“準備の体勢”を作ることが大事です。その上で、左足を着地させるタイミングを自分でコントロールすることで、体重移動と“割れ”のタイミングをピッチャーに合わせることができます」

 野球用語でよく聞く“割れ”という言葉だが、それは、前足を着地しトップを作った際に生まれる、上半身と下半身との“捻転差”のこと。「筋肉が伸び縮みする伸張反射を使うことで、力と速さが生まれます。打撃のなかでは必要な動作、スキルになります」と依田さんは語る。

 打撃の確実性、飛距離を上げるには、タイミングを上手に取れること。打席のなかで余裕を持って準備ができれば、ボールを長く見ることができ、ストライク・ボールの判別もしやすくなる。“投高打低”の野球界で生き残るために、依田さんは選手たちをサポートしていく。

(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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