“下手くそ”な元控え選手が感謝する叱咤 高校進学後に痛感「監督の無視が一番つらい」

福岡・ポニー筑後リバーズの練習の様子【写真:編集部】
福岡・ポニー筑後リバーズの練習の様子【写真:編集部】

「ポニー筑後リバーズ」入部英徳監督は看護師経験を生かし中学硬式野球日本一へ導く

 ふと自身の指導を振り返ると、主力選手にばかり話をしてしまってはいないだろうか。9月8日に行われた「2ndエイジェックカップ 中学硬式野球グランドチャンピオンシリーズ」で、中学硬式5リーグの頂点に輝いた「ポニー筑後リバーズ」(福岡・筑後市)の入部英徳監督は、野球を熱心に教えながら、日中は精神科の看護師として働いている。Full-Countでは小・中学世代で日本一を成し遂げた監督に取材。選手たちの感情の浮き沈みを察知し、仕事の経験も生かしながら、全員平等の指導を心掛けているという。

「試合に出ている子たちはいつも、みんなの目に晒されるからいいんですよ。いろんな変化に気付いてもらいやすい。3年生は9人しかいないんですけど、そのうち2人はエイジェックカップのときにメンバーから外れていたんです。そんな、試合に出られない子たちに、どれだけ目を配れるかが大切だと思いますね」

 普段から選手に「厳しく声をかけがち」という入部監督だが、子どもたちの様子を観察しながら、1週間で全員に何かしら声をかけるようにしている。「体が大きくなったな」「気を付けて帰れよ」「ご飯食べろよ」「ちゃんとタスキ(夜道で反射する交通安全グッズ)してるか?」……。そうしたたわいもない言葉でも、選手たちにとっては「うれしいものなんですよ」と語り、次のように続けた。

「病院で働いていても、例えば、入院中にご両親が亡くなって帰れる場所がないとか、そうした、つらい身の上話を患者さんがしてくれることもあります。このような場合、たくさん会話をすることで落ち着いてくるんです。歩み寄ることってすごく大事なんですよ」

選手たちに声をかける入部英徳監督【写真:編集部】
選手たちに声をかける入部英徳監督【写真:編集部】

相手にされなかったことが一番つらい…教え子の言葉が全員平等指導の教訓に

 元気な中学生の子どもたちに対しては、必要に応じて叱ることも、この声かけに含まれる。ある卒団生の言葉をきっかけに、入部監督はそう感じるようになったと話す。

「『高校に行ったら、僕、下手くそなんで、監督から声をかけてもらえないときがありました』と言うんですよ。叱られてもいいから、声をかけてほしかった。存在を無視されているようで、相手にされなかったことが一番つらかったと。中学時代はあまり目立たない子だったんですけども、『筑後リバーズでは監督にいつも叱られとった』と。時間が経ってみると、すごくありがたいことだったんだと感じたようです」

 今年の3年生とは、練習を中断して衝突することも多かった。しかし、2人きりで話す場を設けるなどして、選手たちのプライドを守りながら、心情に寄り添ってきた。

 今回メンバー外だった3年生2人に対しても同様だ。「野球の指導も、病院の仕事と同じで、人間ウォッチングです。気持ちのことも含めて何事も、早めに手を打たないといけない」と語る入部監督は、今月21日からの「日本一の指導者サミット」に出演予定。選手が「孤独」に感じることのない指導論の一端を明かしてくれる。

中学硬式野球日本一…ポニー筑後リバーズの指導・練習法を紹介!

 Full-Count、First-Pitchと野球育成技術向上プログラム「TURNING POINT」では、今月21日から5夜連続でオンラインイベント「日本一の指導者サミット2024」を開催します。小学生・中学生の各野球カテゴリーで全国優勝経験がある全11チームの監督を招き、日本一に至るまでの指導方針や独自の練習方法について紹介していきます。参加費は無料。登場予定チームなどの詳細は以下のページまで。

【日本一の指導者サミット2024・詳細】

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(喜岡桜 / Sakura Kioka)

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 球速を上げたい、打球を遠くに飛ばしたい……。「Full-Count」のきょうだいサイト「First-Pitch」では、野球少年・少女や指導者・保護者の皆さんが知りたい指導方法や、育成現場の“今”を伝えています。野球の楽しさを覚える入り口として、疑問解決への糸口として、役立つ情報を日々発信します。

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