少年野球に“イエローカード”導入の絶大効果 罵声撲滅へ…警告受ける大人にある「特徴」

2色カードによる“警告”を行う高知県軟式野球連盟少年学童部の審判団【写真:喜岡桜】
2色カードによる“警告”を行う高知県軟式野球連盟少年学童部の審判団【写真:喜岡桜】

試合中の不適切言動・行動に2色カードで警告…改革進む高知県の小学生学童野球界

 まるで幕末の偉人・坂本龍馬のように、高知県軟式野球連盟少年学童部は「今こそ変わろう 変えよう少年野球!」をテーマに掲げて、2016年から改革に乗り出している。その1つとして、大会で小学生たちが伸び伸びと野球をプレーできるよう、イエローカードとレッドカードによる罵声・怒声対策を2020年に導入。発案者であり同連盟副理事長の宮田薫さんは「注意する回数は年々減っていると思う」と、“世直し”に手応えを感じている。

 指導対象は、出場チームに所属している指導者、子どもはもちろん、スタンドにいる保護者などの観戦客にも及ぶ。試合中に、審判のジャッジや選手のエラーなどに対して不適切な発言があった場合は、審判もしくは大会運営スタッフから、声の主へ2色のカードのいずれかが出されるというルールだ。

 大人2人以上がイエローカードで警告を受けたチームの監督は、次の試合でベンチ入りできなくなる。レッドカードは球場から“退場”となり、同じくチームの監督は次戦でベンチ入りできない。施設内の喫煙、フェアプレーや少年野球の場に相応しくない行動にも、カードを用いて注意を促している。

「警告されたことでヒートアップしてしまう人もいるので、スタンドには、言い合いに慣れている私や男性スタッフが声をかけにいっています。1回戦はどこのチームも穏やかなのですが、勝ち進めばだんだん力が入ってきて、接戦とか、もうちょっとで決勝、優勝という試合になると、スタンドから良くない言葉が聞こえてくることがあるんです」(宮田さん)

 声の主は、野球経験のある父親であることが多いという。「今はそんな時代じゃない」と頭ではわかっていても、熱が入ってしまうことで、若いときに自身も浴びてきた怒声・罵声が咄嗟に口から出てしまうのだろう。カードが導入されたころは「今の声のかけ方がおかしい? こんなんで指導されるの? という声が多かったですよ」と宮田さん。しかし、地道な注意喚起が浸透し、最近は「すみませんでした、気を付けます」と言葉が返ってくるようになったといい、レッドカードを出すほどの“事件”は今年9月末時点では起きていない。

今後もカードが使われる事態が減ることを願いたい(写真はあくまでイメージです)【写真:喜岡桜】
今後もカードが使われる事態が減ることを願いたい(写真はあくまでイメージです)【写真:喜岡桜】

審判部の見解は「不適切・相応しくない言葉や表情」…これまで警告したのは、ほぼ大人

 宮田さんがスタンドに目を光らせる一方で、主にベンチにいる大人に対して警告をする審判団は、どのような判断基準で、胸ポケットにしまっているカードをどのような場面で出しているのだろうか。

 同連盟審判部長の山崎智文さんによると、主役である小学生が萎縮してしまうほどの威圧的言動がみられたとき、具体的には「バカタレ!」「アホ!」などの不適切なフレーズや、明らかに指導者に相応しくないと感じられるような、眉間にしわを寄せたりしながら大声で言葉を発しているときは、警告の対象になるという。

 一方で、子どもへの警告は「あるかな? 思い出せないです」と言うほど滅多にない。山崎さんは「昔はチームメートが失敗したら、『お前、そんなこともできないの?』と罵ったり、からかったりする子が多かったけれど、今の子たちは、小さいときからご家庭で『そんな言葉を使ったらダメ』と躾けられている世代。カードで注意しないといけないようなこともありません」と明かす。

 学童野球の最高峰である「全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメント」に繋がる今年の「高知県予選兼第10回記念高知県軟式野球連盟学童部王座決定戦大会」には、48チームが参加したが、県予選決勝までの47試合のうち、出されたイエローカードは2枚。どちらも大人に対するものだった。

 カードによる警告頻度は、年々少なくなってきており効果てきめんと言える。同連盟はこれからも型にとらわれない策を講じながら、子どもたちを取り巻く環境を変えていく。

(喜岡桜 / Sakura Kioka)

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