少年野球でも必須…データ活用は「感情的にならなくていい」 投球で目指したい“95超”

「デジタル野球教室」で指導した元ヤクルト・青木宣親氏【写真:高橋幸司】
「デジタル野球教室」で指導した元ヤクルト・青木宣親氏【写真:高橋幸司】

数値を使ってパフォーマンス向上を…「デジタル野球教室」で元燕・青木氏らが指導

 進化する“データ野球”への対応力は、小・中学生の段階から磨く時代になる。ライブリッツ株式会社が主催する「デジタル野球教室」が16日、東京都内で開催され、今季限りで現役を引退した元ヤクルト・青木宣親さんらがコーチとして参加。さまざまな計測機器を使いながら中学生球児に技術指導を行い、現代野球に必要なデータ活用の重要性を伝えた。

 投球では球速や回転数、回転軸、打撃では打球速度や角度、飛距離、スイング軌道……。計測機器の進化によって、あらゆるものが数字で“見える化”できる時代になった。今回の野球教室は、データを活用しての効率的なパフォーマンスアップを実感してもらおうと企画されたもの。「ラプソード」「トラックマン」「ブラスト」などの機器が用意され、元ヤクルトの松井淳さんが打撃、元早大、JX-ENEOSの内田聖人さんが投手コーチ役となって、30人の中学生へ数値を元に指導にあたった。

 さらに特別コーチとして登場したのが青木さんだ。バットを握るのは10月頭の引退試合以来で「体重は5キロも減りました」というものの、日米を駆け抜けたヒットメーカーの技術を惜しみなく球児たちに伝えた。「ポイントはもっと前に」「左手首をロックして」。的確な指導で選手たちが次々と快音を響かすと、その“慧眼”ぶりに参加者からは驚きの声が上がった。

 日米通算2723安打を積み上げる上でも、データは役立った。「2012年に渡米して、そこから3~4年でずいぶん進化して、日本でも(データに)特化するようになりました」。青木さんの場合、自身の打球速度・角度などはもちろん、「基本的にはヒットを打つバッターなので、投手のデータを見るようにしていた」という。例えば、同じスライダーでも通常の横滑り変化と、チェンジアップ要素の奥行きも交えた変化との2種類を使い分ける投手もいるといい、「同じ軌道で見分けがつかない」ハイレベルな相手の攻略にも活用してきた。

 少年野球でのデータ利用についても、「数字を見せられて『君のスイングはこうだよね』と指導された方が選手も納得もできるはず」とうなずく。「数値化して説明した方が理解されやすいし、感情的にならなくていい。それは絶対的にあると思う」と、教える側にもメリットが大きいと語った。

ピッチング指導を行った内田聖人氏【写真:高橋幸司】
ピッチング指導を行った内田聖人氏【写真:高橋幸司】

データという“新しい軸”が選手の活躍を左右…まずは「自分の体を深く知る」ことから

 小・中学生の段階では、まだ分析機器と接する環境も少なく、数値の活用も難しいかもしれない。それでも、「データに関しては今後進化する一方で、衰退することはない」と語るのは内田コーチだ。

「英語の勉強を高校で始めるのと、小学生から始めるのとでは、大きく違ってくるのと一緒。データに触れる機会を早い段階で作ることは絶対に大事で、データという“新しい軸”を使いこなせる選手が活躍できる時代になる」と力説する。

 技術の可視化はモチベーション向上にも繋がるようで、この日は自己最速を更新する投手が続出した。では球速以外で、“分析初心者”が確認するとよい項目は何か。ストレートの球質に関わる“回転効率”を内田さんは挙げる。「ストレートの回転効率が95%以上ならば文句なし。逆に80%とか低ければ、リリース時の圧力にズレが生じている可能性がある。それが手先の問題なのか、体の使い方の問題なのか、何かしらのエラーやロスが起こっている確認にもなります」という。

トークショーで中学生の質問に答える青木氏【写真:高橋幸司】
トークショーで中学生の質問に答える青木氏【写真:高橋幸司】

 もちろん、データの重要性が増しても、野球をやるのはあくまで人間。そこには選手自身の感覚や努力も必要だ。青木さんは「結局は、数字を見てどう自分に“落とし込む”か。フォームを見直すのか、トレーニングをして筋力をつけるのか。そこはメジャーでも難しいとされている」と語る。

 その上で、“落とし込み”ができる選手になるには、小・中学生の段階から自分の体について深く知る姿勢が大事だとアドバイスする。「普段の練習やトレーニングでも、考えながら体を動かし、メカニズムを理解する習慣をつけて、データを見た時に『こうしたい』とアプローチできる選手になってほしい」と、球児たちにエールを送っていた。

(高橋幸司 / Koji Takahashi)

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