少年野球に多い投げ方の「厄介な癖」とは? ボールなしで作れる“理想のトップ位置”

投げ方を指導する塩多雅矢氏【写真:内田勝治】
投げ方を指導する塩多雅矢氏【写真:内田勝治】

トレーニングコーチの塩多雅矢氏が投げ方指導…腕に頼らない「敬礼ポーズ」ドリル紹介

「投げる」「打つ」「捕る」「走る」……。野球は多くの動作を必要とするスポーツだ。中でも「投げる」動作は、投手はもちろんのこと、野手もアウトカウントを取ることに直結するため、守備に就かないDHでもない限り避けて通ることはできない。Full-Countでは少年野球の現場をよく知る専門家に、“投動作”指導の注意点や練習法について取材。約20校の中学・高校の野球部をサポートするトレーニングコーチの塩多雅矢さんの指導方法に迫った。

 11月上旬。塩多さんは、東京・荒川区の中学軟式野球チーム「荒川レジェンド」の選手たちにスローイング指導を行った。塩多コーチは、トレーニング方法だけでなく、スローイングの基礎、基本を教えるために中学や高校を回ることも多いという。

「投げ方の癖が抜けずに困っている子は、結構多いです。早い段階で、投げる時に共通して大切なことを身に付けておくことは、すごく大事なことだと思います」

 少年期の厄介な癖としては、テークバックの段階で手首が返り、トップの位置で手の平が完全に上を向いてしまうことだという。こうなると、ボールにうまく力を伝えることができず、方向性も定まらない。キャッチボールで矯正しようにも、狙ったところにいいボールを投げようとして力み、腕投げになったり、体が開いてうまく制球できなかったりと、悪循環に陥る。

スローイングの基礎、基本を教える塩多氏【写真:内田勝治】
スローイングの基礎、基本を教える塩多氏【写真:内田勝治】

本当に球速が必要なのは投手ではなく「野手の方」

 そんな時にお勧めなのが、ボールを持たずにできる「敬礼ポーズ」ドリルだ。塩多氏は、スローイングで大切なこととして「手の平を上に向けない」「胸をしっかりと動かす」「両肩を入れ替える」の3点を挙げる。このドリルを繰り返し行うことで、体全体の力を余すことなくボールに伝えることができる。

「投げる動作の基本は、胴体を回して両肩を入れ替える動きによって腕が“振られる”ということ。ここで、手首が上を向いていたら、ボールが抜けてしまうので、手の平は絶えず下を向けたまま、ボールを“潰す”という動作が重要になってきます」

 右投げであれば、まず右腕で敬礼のポーズを取り、その角度をキープしたまま腕を背中側へスライドさせる。そこから投げる方向に顔を向け、左腕はグラブを抱えるように曲げ、顎を隠すように左肩を上げて、左肘と右肘を背中側でくっつけるようなイメージで胸を張っていく。これが理想のトップの位置だ。

 次は両肩を入れ替えた後のフィニッシュを作るドリル。同じく右投げの場合、左肘を90度に曲げた状態から、左脇腹を“潰す”ように上半身を左側へ傾け、最後は右肩を左腕に巻き付けるように前に持っていく。正面から見た時、左肩が右肩に隠れて見えないくらい体が回せているかがポイントだ。このフィニッシュの形を意識して、敬礼ポーズで作ったトップの位置から体幹を回すことで、腕だけに頼らない投げ方ができるようになる。

「投手は球速が遅くてもアウトを取る方法はありますが、野手が遅ければアウトにできる回数が減ってしまう。本当に球速が必要なのは、野手の方です。甲子園を目指している強豪校は、キャッチボールはきちんとできる前提でチームを作っていく傾向が強いので、(高校進学前の)なるべく早い段階で矯正しておく方がいいです」

 思ったようにスローイングができない選手は、まずボールを置いて体の使い方から見直してみよう。遠回りに見えるかもしれないが、きっと何百球、何千球投げるより効果がある。塩多コーチは12月16日から開催される「投球指導week」でも、トレーニング方法を紹介してくれる予定だ。

塩多雅矢さんも登場…少年野球の投げ方指導に役立つ練習法を紹介!

 Full-Count、First-Pitchと野球育成技術向上プログラム「TURNING POINT」では、12月16日から5夜連続でオンラインイベント「投球指導week」を開催します。球速を上げたい、制球力を磨きたい、正確な送球をしたいなどの悩みを抱える選手・指導者・保護者に向けて、小学生・中学生の各野球カテゴリーで豊富な実績を持つ指導者・トレーナー陣が、練習方法やケア方法をアドバイスしていきます。参加費は無料。出演者などの詳細は以下のページまで。

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(内田勝治 / Katsuharu Uchida)

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 球速を上げたい、打球を遠くに飛ばしたい……。「Full-Count」のきょうだいサイト「First-Pitch」では、野球少年・少女や指導者・保護者の皆さんが知りたい指導方法や、育成現場の“今”を伝えています。野球の楽しさを覚える入り口として、疑問解決への糸口として、役立つ情報を日々発信します。

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