西武を救った牧田の男気 臨時守護神がもたらした“目に見えない効果”
突然の配置転換にも牧田が見せた気概
男気。15年度の球界においては、メジャーの巨額契約を背に古巣広島への復帰を決めた黒田博樹の生き様を示す。この男の心意気も男気にあふれている。西武牧田和久投手は開幕投手を務めながら、臨時守護神、そして再び先発ローテに戻った。シーズン中にこれだけ目まぐるしくポジションが変わるのは異例だ。
ストッパーの任が回ってきたのはチーム事情からだった。7月に入り、救援陣が火の車となった。セーブでリーグトップを争っていた高橋朋が同月の防御率11・74、セットアッパーの増田が11・17と絶不調に陥った。2人の代役を務められるだけの球威と決め球を持つ投手は救援陣の中にはいなかった。代役はルーキー時代の4年前にシーズン途中の転向で22セーブを挙げた経験のあるサブマリンしかいなかった。
7月30日のロッテ戦の試合前。牧田は田辺監督ら首脳陣に呼ばれ「お前しかいない、頼む」と言われたという。牧田も複雑な胸中だった。「プライドを持って開幕投手を務めたつもり」。それまで5勝7敗と黒星は先行していたが、防御率2・93と安定感は抜群だった。期間限定の転向ではなく、救援陣が復調するまで、という先行き不透明な配置転換。先発投手としての命題でもある2桁勝利が遠のくことを意味していた。
だが首を縦に振った。