投手の緩急に負けない“間の作り方”とは? 松坂世代大砲が伝授する「0.6」対応術
元横浜の大砲・古木克明さんがバッティング指導…タイミングの取り方で「『ニの』が大切」
現代はスマートフォン1つあれば、動画で一流選手のプレーや指導法を簡単に視聴することができる。ただ、いくら時代が移り変わろうとも、変わらない教えがある。今月1日、かつて横浜(現DeNA)、オリックスでプレーした古木克明さんが、東京・西東京市の早大・安部球場で行われた「GRAFARE(グラファーレ)ジュニア野球教室」(タクトホーム株式会社主催)に講師役として参加。バッティングでのタイミングの取り方の基本を小学生たちに伝えた。
豊田大谷高(愛知)時代に通算52本塁打、NPBでも通算58本塁打をマークした左の大砲の打撃論は、至ってシンプルだ。参加した少年野球28チーム、約170人の子どもたちに指導したのは、「イチ、ニの、サン」というタイミングの取り方の重要性だ。「イチ」でバットを構え、「ニ」でバックスイングをし、「サン」で打ちにいくとは昔からよく言われるが、大切なのは「ニ」のところでしっかり“間”をとることだという。
「『イチ』の構えから、トップの位置にいくまでが遅れたら、まず打てないです。『ニの』は、一番大切なボールに合わせる時間。だからこの『ニの』という時間をしっかり作って、『サン』のスイングをしてください」
「ニの」には、打撃の神髄が詰まっているという。大切にしたいのは、まず「ニの」の「ニ」でトップを作る際、しっかり止まって“ボールを見る”ということ。
「止まっていれば、ボールをしっかり見ることができます。飛んでいる蚊を叩く時に、一緒に手や体を動かしていたら見づらいですよね。止まって待つ方が叩きやすいのと一緒で、バッティングもしっかり止まってボールを見られるようにしましょう」
そして「ニの」の「の」はステップに使う時間だ。投手も緩急を織り交ぜながら、何とか打者のタイミングを外そうとしてくる。全て「イチ、ニ、サン」のリズムでは、同じ間の取り方になってしまい、緩急に対応するのは困難だ。少年野球であれば、投手のリリースからわずか0秒6ほどでボールが到達する。打者は「の」の時間で、球速に合わせたステップの対応が求められる。
「打者はステップに使う時間で、ボールに合わせていかないといけません。投げてくる球が真っすぐなのか、スローボールかで、その時間が違ってきます。だから、『の』でボールに合わせる時間をしっかり作ってください」
情報が溢れる世の中だからこそ…「もう一度原点を思い出してほしい」
現在、中学硬式野球チーム「横浜みなとみらいポニー」の監督を務める古木さんは、科学的根拠に基づいたトレーニングを取り入れる一方で、自身の経験に基づいた打撃理論も大切にしている。「イチ、ニの、サン」も、その1つだ。
「今はYouTubeで情報を簡単に手に入れられる時代で、いろいろな理論はあると思うんですけど、昔から変わらない部分はあって、『イチ、ニの、サン』って言われ続けるのも、それが原点、基本だからだと思っています。その部分をもう一度思い出してほしいという願いを持って、子どもたちに伝えています」
野球教室では同じく講師を務めた松坂大輔さん(元西武)や館山昌平さん(元ヤクルト)ら、同学年のライバルたちと再会し、「野球をやっていて本当によかった」と頬を緩めた。「松坂世代」が生んだ長距離砲の教えを、育成世代からしっかりと体に染みこませたいところだ。
(内田勝治 / Katsuharu Uchida)
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