“独りよがり”の精鋭小学生をまとめる方法は? 元プロ指導陣が導き出した「責任感醸成」

初日のDeNAジュニア戦で本塁打を放った日本ハムジュニアの主将・佐々木【写真:加治屋友輝】
初日のDeNAジュニア戦で本塁打を放った日本ハムジュニアの主将・佐々木【写真:加治屋友輝】

12球団トーナメント予選1位突破…吉田侑樹監督率いる日本ハムJr.快進撃の要因

 精鋭集団だからこそ、『全員野球』を――。「NPB12球団ジュニアトーナメントKONAMI CUP 2024 ~第20回記念大会~」は27日に予選の2日間が終了し、28日に行われる準決勝進出3チームと、ワイルドカードを争う2チームの計5チームが出揃った。予選2勝0敗、TQB(Total Quality Balance)1位で勝ち進んだのは北海道日本ハムファイターズジュニア。今年から指揮を執る球団OBの吉田侑樹監督が強さの秘密を明かした。

 26日は前年王者の横浜DeNAベイスターズジュニアを2-1の僅差で破り、27日は埼玉西武ライオンズジュニアに16-2で大勝。予選では投打ががっちり噛み合った。ただ、こうして試合で持ち味を発揮できるようになるまでには時間を要したという。

 吉田監督は就任当初、選手たちの練習に取り組む姿勢を見て危機感を覚えた。「普段各チームで主力を張っていて、『自分が、自分が』となっている子が多かった。声を出してチームを引っ張るということを、1人1人がなかなかできなかったんです」。選ばれた16人全員、実力は申し分ない。しかし実力があるゆえに、「独りよがり」の意識が浮き彫りになっていた。

 浅沼寿紀、谷口雄也の両コーチとも話し合い、吉田監督は「全員に責任感を持たせることが一番大切」と結論づけた。小学生に短期間で責任感を芽生えさせるのは簡単なことではない。そこで、「1人1人がキャプテンの意識を持とう。キャプテンに任せるのではなく、全員で盛り上げよう」とシンプルな言葉で発破をかけた。

ベンチで声を出す選手たち【写真:川浪康太郎】
ベンチで声を出す選手たち【写真:川浪康太郎】

打撃好調の佐々木然主将「声の力で打線がつながったと思う」

 指揮官の思いは徐々に選手たちに伝わり、練習でも試合でも声を出す姿が目立つようになった。いつしか全員が責任感を持って戦えることが日本ハムジュニアの強みになり、今大会の予選でその強みを体現した。

 初戦に先発登板した前口栄飛投手(6年=西岡スターズ)は4回2/3を投げ5安打無死球1失点と好投。初回には自己最速を更新する124キロを計測した。吉田監督が「今年のジュニアのナンバーワンピッチャー」と評する左腕は、「声を出してみんなを引っ張って、少しでも貢献したい」との思いでプレーした。味方の好守が飛び出した際に全力で喜びを表現するなど、投球だけでなく一挙手一投足でチームを盛り上げた。

 4番に座る主将の佐々木然捕手(6年=青葉シャークス)は「声で引っ張るのがあまり得意ではない」と言いつつ、「その分プレーで引っ張ることを意識しています」との言葉通り、初戦は決勝本塁打、2戦目は先制適時打を含む2安打3打点をマークするなど躍動。チーム状態については「みんなで声をかけ合えていて、雰囲気がいい。声の力で打線がつながったと思う」と手応えを口にした。

 埼玉西武ジュニア戦は16人全員が試合に出場。下位打線を打つ選手も控え選手も関係なく、「キャプテンの意識」を持つ1人1人が役割を果たし、19安打16得点と相手を圧倒した。「ずっと『全員野球』でやってきたので」と吉田監督。「倒してきた相手のためにも日本一を獲る使命がある。ここで満足せず、あと2個しっかり勝ちたい」と13年ぶりの優勝に向け気を引き締めた。

(川浪康太郎 / Kotaro Kawanami)

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