野球離れに加速感「世間に選ばれなくなる」 実数把握開始も…学童“6000チーム消滅”の内実

野球はいずれ「見る」だけの競技に!? 野球人口減少食い止めへの鍵となるもの
小学生の学童軟式野球チームが、この15年で4割減――。ショッキングな事実が最新の統計データで明らかとなっている。15年前の2010年度は1万4824あった全日本軟式野球連盟(JSBB)の登録チームが、3年前の2022年度に「1万」の大台割れ。そして2024年度の統計では「9000」も切って、8680チームに。全国で15年間に消えたチームは、6144チームにも上る計算だ。前年比の減少は19年連続で、コロナ禍を経てその度合いが増している点も気掛かりだ。
プロ野球の観客動員数は、パ・リーグは2024年度に最多を更新し、セ・リーグはコロナ禍前の状況まで持ち直している。その一方で、次代を支える少年少女の競技者激減に歯止めがかかっていない。日本において野球が「オワコン」になることはまずないだろうが、「やるスポーツ」ではなく、「見るスポーツ」となってしまうのは時間の問題なのかもしれない。
「誰でも野球を知っている、という時代がいずれ終わるのは間違いないでしょうね。学童のチーム数がもっと減ることも想定しています。現場も僕らも変わらないと、世間の親子にまったく選ばれない競技になってしまうと思います」
あくまで私見としてだが、そう危機感を露わにするのは日本で最も多くのチームと競技者を抱えるJSBBの吉岡大輔事務局長だ。
近年は子どもたちの「野球離れ」が報じられることも多く、振興・普及活動が活発化している。しかし、「野球界」として一枚岩で効果的になされているのかといえば、依然として疑問符がつきまとうのが現実。伝統のある日本の野球界には統括団体が多数あり、それぞれ不干渉と引き換えに独自のルールで活動しているからだ。
「どの団体にも危機感があって、それを共有して連携してやりましょう、という方向性にはなってきています。でも、まだまだ動きは鈍く、難しい面も多いと感じています」(同事務局長)

「野球ねっと」導入で都道府県別の選手数を初めて把握できるように
他競技では何十年も前から当たり前の「競技者登録システム」も、野球界ではNPB(日本野球機構)が提供する「野球ねっと」として始まったばかり。JSBBでの同システム導入は2年前の2023年度で、選手の数を都道府県別に初めて把握できるようになった。地域別の選手の実数と増減が明らかになれば、普及・振興活動なども、より計画的で弾力的な施策を打てるようになるはず。最新の2024年度の学童選手の実数も明らかになっており、15万7255人。ただし、吉岡事務局長はこのようにクギを刺す。
「選手の数は実際はもっと多いです。『野球ねっと』に登録されていない地域やチームも少なからずありまして、ご理解とご協力をいただけるにはまだ2年、3年、もっとかかるかもしれません」
JSBBの下部組織、各都道府県の軟式野球連盟の大会に出場するチームと選手は「野球ねっと」の登録が不可欠。チーム登録料は200円で、監督、コーチ(2人まで)、選手は1人につき50円の登録料が発生する。
未登録のチーム(選手)の主な理由は、次のようなものだという。「地元の市区町村大会にしか参加意思がない」「登録費が高い」「個人情報の保護」「デジタル化に未対応」。これらがチームの総意・現状ならばいいのだが……。

門戸を広げる鍵は指導者の質と学び「意識改革がもっと必要」
競技人口激減の流れを食い止めるためにも、吉岡事務局長が鍵になると語るのは、全国に3万176人(2024年度の登録者)いる指導者たちの質だ。
「一般の子どもたちに野球に興味をもってもらう取り組みはできてきていますけど、いざチームに入ってみたら『面白くない』『話が違う』と、やめてしまうケースやクレームがとても多い。野球の間口を広げるには、受け皿のほうもしっかりと整えておかないと。はっきりと言うなら、指導者の意識改革、学びがもっと必要だと思います」(同事務局長)
ボールを捕る・投げる。今の子どもは、チームに入ってここから始めるケースも多い。にもかかわらず、効率的に楽しませながら教えられる指導者が圧倒的に少ない。これは筆者も15年以上前から現場取材で痛感しており、雑誌媒体などで具体的な模範例も発信してきた。しかし、現場へ出てみると、初心者・入門者にダラダラとキャッチボールをさせるだけの大人が何と多いことか。自分の無力も痛感するばかりだ。
指導者のライセンス制度も、野球界では各団体でいろいろあって複雑。それでもJSBBでは昨年度から導入した。この成果がチームや選手の数に反映されるようになるのは、数年よりもっと先のことになるのかもしれない。学童チームが20年で半減、という事態も予想できてしまうのが、残念ながら現在の野球界だ。
〇大久保克哉(おおくぼ・かつや)1971年生まれ、千葉県出身。東洋大卒業後に地方紙記者やフリーライターを経て、ベースボール・マガジン社の「週刊ベースボール」で千葉ロッテと大学野球を担当。小・中の軟式野球専門誌「ヒットエンドラン」、「ランニング・マガジン」で編集長。現在は野球用具メーカー、フィールドフォース社の「学童野球メディア」にて編集・執筆中。JSPO公認コーチ3。
(大久保克哉 / Katsuya Okubo)
球速を上げたい、打球を遠くに飛ばしたい……。「Full-Count」のきょうだいサイト「First-Pitch」では、野球少年・少女や指導者・保護者の皆さんが知りたい指導方法や、育成現場の“今”を伝えています。野球の楽しさを覚える入り口として、疑問解決への糸口として、役立つ情報を日々発信します。
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