全身連動で球速10キロアップ 大谷ら“愛用”で再脚光…プライオボールの秘めた可能性

MLB東京開幕で脚光…プライオボールを使う際に気をつけたいこと
MLB東京開幕シリーズを控え、ドジャース・大谷翔平投手や佐々木朗希投手らの試合前のウオーミングアップで見られる“壁当て”トレーニングが、再び注目を集めている。重さの違うカラフルなプライオボールを後ろ向きに投げる動作や、反対の足を前にして投げるといった動作には、実は投球メカニクスに基づいた科学的根拠がある。
ボールと壁当てドリルを開発したドライブラインベースボールが、この効果的なトレーニング法を日本語のガイドブックで無料公開。そこには将来を担う若い世代が「間違った使い方をしてほしくない」という願いが込められている。
投球動作は複雑な全身運動であり、特に「運動連鎖」と呼ばれる体の部位間のエネルギー伝達が重要だ。通常のピッチング練習では、一部分のフォーム修正を試みても、他の部位との連動が崩れ、効果が得られないケースが多く見られる。プライオボールのドリルはこの問題を解決するため、投球動作を時系列に分解し、各段階を個別に強化できるよう設計されている。
例えば、なぜ重いボールを組み合わせるのか? 通常の野球ボール(約150グラム)は軽量なため、不適切なフォームでも投げることが可能だ。しかし、300~900グラムの重いプライオボールでは、腕力だけでなく体幹や下半身など大きな筋肉群の連動が不可欠となる。この“強制的”な全身連動が、投手の理想的な投球メカニクスを自然と体に刻み込み、結果として肘・肩への負担軽減、球速向上、コントロール安定という三位一体の効果をもたらしている。

模倣品のボールに“警笛”…正しい使用法を
ハーバード大学医学部客員教授の根来秀行氏も「医学的見地から見ても、球速向上や障害予防に高い効果がある」と評価。実際、ドライブラインベースボールの測定では、継続的なプライオボールトレーニングによって約10キロ前後の球速向上が観測された。
これは単に「重いボールの後に軽く感じる」という一時的な効果ではなく、投球動作の根本的な改善による持続的な効果だ。各選手の体格や特性に合わせたオリジナルの理想フォームを確立できる点も、多くのMLB投手がこのトレーニングを取り入れる理由と言える。
プライオボールのドリルは、複雑な投球動作を分解して「見える化」することで、選手の身体感覚と理解を深める。試合前の壁当てはただのウオーミングアップではなく、投手の体を最適な状態に導くための科学的アプローチなのだ。
模倣品のボールが世の中に出回っている。重さと大きさの組み合わせ、素材の厚みなどが全く異なることから、ドライブラインのドリルを行うと、ボールの重さを活用した時にアプローチする筋肉が変わってしまい、繊細な構造である肘などに故障が発生する危険性があると専門家からの指摘もある。日本の野球界にも新たな風を吹き込まれているからこそ、使う際は注意して、未来を描いてほしい。
(楢崎豊 / Yutaka Narasaki)
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