戦力外で芽生えた「もういいかな」 “記念受験”のトライアウト…元巨人右腕、第2の人生

3GoodGroup HOZEN noLIMITEDsの小沼健太【写真:町田利衣】
3GoodGroup HOZEN noLIMITEDsの小沼健太【写真:町田利衣】

ロッテ、巨人でプレーした小沼健太はクラブチームで右腕を振る

 ロッテ、巨人でプレーした小沼健太投手は、JABA埼玉県野球連盟に2025年度から加盟した社会人野球・企業型クラブチーム「3GoodGroup HOZEN noLIMITEDs」で現役を続けている。都市対抗の埼玉県予選は一次予選の2回戦で敗退したが、26歳で歩む新たなキャリアは「野球がさらに楽しくなりました」と変わらない輝きを放っている。

 1軍登板なしに終わった昨季限りで巨人を戦力外となった。ロッテ時代に「一番といっていいほど仲が良かった」という成田翔投手が兼任コーチとして所属している縁もあり、この道を選んだ。12球団合同トライアウトを受験していたが「開催場所がZOZOマリンで地元だったというのもあったし、記念受験みたいな感じです。翔さんの仕事の話も聞いていてそっち一本で行こうかなというのは最初から決めていたので」と迷いなく歩みだした。

「僕も現役のときは急に辞める人の気持ちがわからず『何でやらないんだろう』と思っていました。でも自分がジャイアンツを戦力外になってその立場になったら『いいや』ってなったんです。自分のことを考えたときに、やりたい気持ちもなくはないけど、『もういいかな』っていうのが芽生えてきたので」

 東総工高からBC・武蔵、BC・茨城を経て2020年育成ドラフト2位でロッテに入団した。2023年途中に巨人にトレードとなり、NPBでの生活は4年間。「終わってみれば短いなって思ったんですけど、すごい長い4年間でした。最後の1年は『このまま終わるな』って思ったので体感的に短かったですけど……。独立、育成、支配下、全部経験できたので、楽しかったの一言ですかね」と振り返った。

練習場は室内の限られたスペースも「その中でどうやっていくか、面白い」

 新生活は、野球だけだったこれまでの生活とは一転した。ビルメンテナンス業などを行う株式会社ホゼンで、月曜から金曜までは午前8時から業務に励む。今は数か月おきにいくつかの部署を経験中。今後も営業などの研修を行っていく予定だ。「まだどこに配属になるか決まっていないですけど、いろいろな種類の仕事があって楽しくやらせてもらっています」と話す表情からは、充実感が伝わってくる。

 練習は基本的には週に2日で、土日に試合。平日の練習は室内練習場の限られたスペースで行う。プロ時代とは比べ物にならない環境にも「日数が少ない分ちゃんと考えて、その中でどうやっていくかみたいなのも面白いですよ」と笑う。何よりも「プロ時代はやっぱり仕事だったので、野球が。週に6日やっている中で、慣れだったりうまくいかないことが多かったですし、結果的に戦力外になってしまったので。野球をやる日にちが少なくなって、さらに楽しくなりました」と純粋な気持ちを取り戻している。

「都市対抗だったり、全日本クラブ選手権だったり、いろいろ全国に出られる舞台があると聞いているので、そこが今の第一の目標です。全国の企業だったり強いチームとやり合っていきたいなというのがあります」。舞台は変わったが、小沼は今も勝利のためにたくましく右腕を振っている。

(町田利衣 / Rie Machida)

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY