大谷翔平が“封印”した1球 僅か18球降板に「あれっ?」…専門家が見た完全復活への道程

ナショナルズ戦に登板したドジャース・大谷翔平【写真:Getty Images】
ナショナルズ戦に登板したドジャース・大谷翔平【写真:Getty Images】

新井宏昌氏が解説「順序を踏んでいる」

【MLB】ドジャース 13ー7 ナショナルズ(日本時間23日・ロサンゼルス)

 ドジャースの大谷翔平投手は22日(日本時間23日)、本拠地で行われたナショナルズ戦に「1番・投手兼指名打者」で投打同時出場。投手復帰後2度目のマウンドは1回18球を投げて無安打2奪三振無四球で無失点だった。野手としても26号2ランを含む2安打5打点の活躍。現役時代にNPB通算2038安打を放ち、MLBにも造詣が深い野球評論家・新井宏昌氏が投手・大谷の現状を解説した。

「自分なりにテーマを持って投げていると感じました。前回の復帰登板で多投したシンカーを、今回は1球も投げていません。他の球種が、どういう球がいくのかなど変化の仕方を確かめながら、調整しながら投げている感じです。二刀流本番に向けて、万全の状態で先発として80、90、100球を投げるところに向けて順序を踏んでいると思います」

 中5日で上がった復帰2戦目のマウンド。初回、先頭のエイブラムズを1球で一ゴロに仕留めた。ベッツの落球で走者を許したが、ガルシアJr.はスイーパーで復帰後初の空振り三振。4番のロウからはカットボールで空振り三振を奪った。この時点で18球。前回16日(同17日)のパドレス戦は1回28球を投げており、新井氏は「今回は球数を増やすと思っていました」という。

 だが、2回のマウンドに向かったのはカスパリアス。「『あれっ?』て思いました。十分に2、3イニングいけると見えましたけど、チームとして故障にならないように大事な使い方をしている。本人はいくつもりだったけど、球団の方針に従ったのではないでしょうか。余力を残しての降板でした」。もう少し見たいと感じるほどの状態だったのである。

「スライダー系は違和感なく思い通りに」

 前回の最速が100.2マイル(約161.3キロ)で今回は98.8マイル(約159.0キロ)。「フォーシームの威力は前回の方があったように思いますが、前回は本人が思った以上に力が入りすぎていた部分もあったのでしょう。きょうはそこまで力まず、考えながら力を入れて投げているように見えました。力を入れた球は159キロ出ていましたからね」。2度目の登板の印象をそう語り「慎重にやりつつ、順調にきています」と評した。

 もちろん課題がないわけではない。「フォーシームは少しシュート回転していました。スプリットも引っかけていたように見えました」。制球面ではまだ本来の出来にはないとしつつ「スライダーはコントロール良く、自分が思うように投げられていましたね」と分析した。

 印象に残ったのは4番のロウとの対戦。「バックドア気味のスライダー系のボール。狙い通りか分かりませんが、スプリットのように見える落ち方でした」。カウント2-2からの7球目、外角のカットボールで空振り三振に仕留めた場面である。「最もよく投げるスライダー系のボールに関しては、違和感なく思い通りに投げられていたんじゃないでしょうか」。

 投手復帰戦だった前回は打者としても2本の適時打を放った。この日もナ・リーグ単独トップに立つ26号を含む長打2本で5打点。投げて、打って、走るのが大谷本来の姿である。実戦形式の投球練習「ライブBP」を経て、メジャーのマウンドで二刀流完全復活への道を順調にステップアップしている。

(尾辻剛 / Go Otsuji)

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