大谷翔平、二刀流で見せた光と影…専門家が見抜いた2つの懸念材料「らしくない」

26号含む2安打5打点も“完全復活”への課題…新井宏昌氏が解説
【MLB】ドジャース 13ー7 ナショナルズ(日本時間23日・ロサンゼルス)
ドジャースの大谷翔平投手は22日(日本時間23日)、本拠地で行われたナショナルズ戦に「1番・投手兼指名打者」で投打同時出場。投手復帰後2度目のマウンドは1回無安打2奪三振無失点だった。野手としても再びナ・リーグ単独トップに立つ26号2ランを放つなど2安打5打点の活躍。ただ、本塁打は8試合ぶりで、現役時代にNPB通算2038安打を放ち、MLBにも造詣が深い野球評論家・新井宏昌氏が打者・大谷の状態と課題を分析した。
まずは1点リードの7回無死満塁。内角の変化球を捉え、右翼線に走者一掃の三塁打を放った。リードを8点に広げて迎えた8回1死一塁。今度は右腕ルトリッジの外角フォーシームを左中間に打ち返した。フェンス際でキャッチしようとしたファンのグラブに当たりグラウンドに戻ってきて一度は二塁打に。ビデオ判定の末に本塁打に覆った。8試合ぶりの一発で再び本塁打王争いリーグ単独トップ。5打点の活躍で勝利に大きく貢献した。
「ホームランは力みのないスイングで外角のフォーシームを逆らわずに逆方向に打ち返しました。テレビで旗の動きを見ると、レフトからライトに風が吹いている。逆風の中で、少し押し戻される方向に打っていった。大谷らしい、いいホームランでした」
長打2本の結果だけを見れば十分な活躍だが「三塁打を打つまでは、ここのところは状態が良くないと思って見ていました」という。その理由の1つに挙げたのが、投手としての実戦復帰。「投手としての調整をしていますが、その分、打席で集中できていない感じがしました。初球ホームランを結構打ちますが、最近は初球に詰まったり、タイミングが合わなくてミスショットしたり、甘い球を振らずに追い込まれてしまうことが多く、何か集中できていない雰囲気を感じていました」。
投手調整で集中力が欠如か…背中への死球の影響も指摘
投手復帰戦だった前回16日(同17日)のパドレス戦は2本の適時打を放ったが、以降の5試合は19打数2安打で打率.105。打点もわずか1で9三振を喫していた。5月25日(同26日)に右肘手術後初の実戦形式の投球練習「ライブBP」を行い、以降も順調にステップアップしてきたが、練習とは違って実戦登板の負担は大きい。「気持ちの大部分が投手の方に集中していると思う。登板後の体の張りもあるでしょう。らしくない打席が多かったのはそのためです」と指摘した。
加えて二刀流の慌ただしさも影響があると指摘する。16日(同17日)のパドレス戦に続いて、この日も第1打席は三振。「2試合とも最初の打席は集中しきれていないと感じました。2、3打席と回ることで打席にも集中できているのではないでしょうか」。初回のマウンドを降りた直後に迎える先頭打者の打席は、何もかもが余裕がない状態。頭を切り替える時間が必要なのである。
もう1つ、不安材料として挙げたのが前カードのパドレス4連戦で受けた2つの死球。特に19日(同20日)の9回、160キロ直球が肩甲骨付近に直撃したものは「残像が少しあると思う」と推察する。「狙われて当たられたとも感じられるボールでした。肩甲骨付近で投球にも影響があると思います。本人は『意識はない』と言うかもしれませんが、打席ではそれ以降、内角の球に対して、そこまで厳しくなくても後ずさりしたり体を引いてしまっているシーンが多くあるように見られます」。
毎年得意としている6月は、この日で4本塁打。15本塁打を放って6度目の月間MVPを獲得した5月に比べると物足りないのは確かである。「投手復帰が鍵だと思うんです。去年は丸々投げていませんし、二刀流は2年ぶりで今は投手の方に気持ちが入っていると思います。4月から試合で投げていれば別ですが、投手の調整が多くなってきた今は、これまでの6月とは違います」。数々の常識を覆してきた二刀流が直面する問題。そんな状態で、これだけの数字を残していることが大谷の凄さを物語っている。
(尾辻剛 / Go Otsuji)