大谷翔平の日米300号…凡退で見せていた“兆し” 専門家が分析「あの2打席があったからこそ」

NPB通算2038安打の新井宏昌氏が分析「調子が悪い時は引っ張る動き」
【MLB】ドジャース 9ー7 ロッキーズ(日本時間25日・デンバー)
ドジャースの大谷翔平投手は24日(日本時間25日)、敵地で行われたロッキーズ戦に「1番・指名打者」で出場。6回に日米通算300号となる27号2ランを放ち、5打数1安打2打点だった。6月に入ってから5本塁打、月間打率.267で、15本塁打、.309と猛打を振るった5月に比べるとペースダウンしているが、ここから上昇気流に乗ることができるか。現役時代にNPB通算2038安打を放ち、MLBにも造詣が深い野球評論家・新井宏昌氏が分析する。
6-3とリードして迎えた6回。無死一塁で第4打席に入った大谷は、相手2番手の左腕ライアン・ロリソン投手と対峙した。内角高めにすっぽ抜けてきた初球のスライダーを避けると、2球目の内角やや高めに来た149キロの速球をとらえた。打球は“逆方向”の左翼へ飛び、ギリギリでフェンスを越えて、女性客が差し出したグラブに収まった。
「内角から真ん中へ入ってくる軌道のストレートでした。あのコースの速い球(フォーシーム、シンカー)を、あのようにバックスクリーンから左方向へ打ち返す気持ちを持ち続けることができれば、もっとホームランを量産できると思います」と新井氏。「逆に大谷の調子が悪い時には、あのコースをライト方向へ引っ張ろうという動きになり、詰まったり、外角球にはバットが空を切ったり、先に当たってセカンド方向へのゴロになったりしがちです」と説明する。
内角寄りの速い球をセンターから逆方向へ運ぶ形ができていれば、「左投手のカーブ、スライダー、スイーパーといった曲がり球が背中の方からフロントドア気味に入って来た時には、ミートポイントまで引き寄せることができるので、ファウルにすることなく、ライトや右中間への長打が出やすくなりますし、外角のボールゾーンへ流れていく変化球はしっかり見送ることができます」と付け加えた。
第1打席中飛、第2打席左飛も「打ち返した方向は非常によかった」
初回の第1打席も、相手先発の右腕ヘルマン・マルケス投手の真ん中の151キロ速球をとらえ、飛球は中堅バックスクリーン方向へ舞い上がったが、飛距離が伸びず中飛。3回の第2打席でも、マルケスが投じた真ん中のナックル・カーブを左翼へ運んだが、フェンスに届かなかった。
「第1、第2打席も、タイミングは合っていましたし、何より打ち返した方向が非常によかった。バットの芯で捉えきれなかっただけです。右投手に対して凡退した、あの2打席があったからこそ、よりレフト方向への意識が強くなる左投手との対戦で、最高のホームランが生まれたのだと思います」と新井氏は分析する。
中堅や逆方向への飛球が人一倍伸びるのは、大谷の持ち味。日本時間25日現在、大谷はナ・リーグ本塁打王争いでダイヤモンドバックスのユジニオ・スアレス内野手に2本差をつけてトップを走り、メジャー最多の32本塁打を量産しているマリナーズのカル・ローリー捕手の背中を追っている。本領発揮はまだこれからだ。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)