大谷翔平を“狂わせた”元助っ人の死球「後を引いた」 専門家指摘、7月不振の理由

ドジャース・大谷翔平【写真:ロイター】
ドジャース・大谷翔平【写真:ロイター】

6月16日に投手復帰し4試合登板…以降の打率は22試合で.213

 ドジャース・大谷翔平投手の打撃は7月に入ってから9試合で2本塁打を放つも、打率.188(成績は9日=日本時間10日現在、以下同)にとどまっている。6月16日に投手復帰を果たして以降は22試合で6本塁打の一方で.213(80打数17安打)と振るわない。現役時代にNPB通算2038安打を放ち、MLBにも造詣が深い野球評論家・新井宏昌氏が現状を分析する。

 投手としては今季4試合に登板し、直近5日(同6日)のアストロズ戦では2イニングを投げ、31球を投じた。次回登板は12日(同13日)に敵地で行われるジャイアンツ戦での先発が見込まれている。新井氏は「投手としては、今月15日のオールスター明けに5回以上を投げ、先発の責任を果たせるようになると思います。ただ、投手復帰してから打撃のスタイルが少し変わった気がして心配です」と指摘する。

「それまでのブルペンでの投球と本番の登板では肉体的な疲労が違いますから、二刀流の感覚をつかむのに時間がかかるのもしかたがないと思います。本人も、実戦のマウンドでは想定以上に球速が出てしまうというようなことをコメントしていますから、本人が思う以上に出力が上がり、体に負担がかかっているのではないでしょうか」と見ている。

 また、二刀流はエンゼルス時代に経験しているとはいえ、「2018年と2023年に右肘を手術している大谷は、次に大きな手術が必要になれば、投手としてはもうメジャーでプレーできないかもしれない。本人も球団も慎重になっているはずで、その気遣いはエンゼルス時代とは比べ物にならないと思います」と新井氏は指摘するのだ。

 6月の1か月間だけで死球を3つ受けた影響も、皆無ではないかもしれない。「特に(6月19日の)パドレス戦で(ロベルト・)スアレス(投手)の160キロのストレートを脇腹に受けた死球はかなりきつかったはず。痛みが後を引いたと思います」とうなずく。

剛腕ミジオウスキーから31号…「素晴らしかった」

 一方で「打率こそ落としていますが、打球方向はいいですし、スランプというわけではないと思います。ちょっとしたきっかけで復調する可能性は高いと思います」とも付け加える。8日(同9日)のブルワーズ戦の初回に放った31号ソロが、それを物語るという。

 大谷はこの打席で逸材右腕ジェイコブ・ミジオロウスキー投手に対し、初球インローの161キロ速球を見逃し、2球目の145キロのカーブを空振りしてカウント0-2と追い込まれた後、3球目にやや甘く来た内角低めのカーブを豪快にバックスクリーンの右へ運んだ。

「普通の打者であれば、初球に161キロの球を見せられただけに、遅れてはならないという意識から、緩いカーブには反応が早くなり過ぎて、打てたとしてもライト方向へ飛びがちです。しっかり手元まで引きつけてセンター方向へ打ち返せたところが素晴らしかったと思います」と新井氏は解説する。

「大谷にとって今季は、いろいろな意味で変化の多い年だと思います」と新井氏。二刀流の復活だけでなく、昨季より長いバットに替え、4月には第1子の長女が誕生した。「私自身は現役時代、子どもが生まれた年には、睡眠をしっかり取るために寝室を別にしてもらっていました。大谷がどういう生活スタイルを取っているかはわかりませんが、ホームゲームでの生活のリズムがだいぶ変わったことは間違いないと思います」と思いやる。

 大谷といえども人間である以上、これまでと違うスタイルが体になじむには時間がかかる。それが完全に自分の物になった時にまた、想像を絶するような活躍を見せてくれるのだろう。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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