エース左腕が抱えた早実の“重圧” 炎天下で投じた145球の意味…胸に秘めるリベンジの時

国士舘に敗れ、昨夏から3季連続で甲子園を逃す
名門校の重圧は、左腕に重くのしかかっていた。早実のプロ注目の主将・中村心大投手(3年)は、第107回全国高校野球選手権西東京大会準々決勝の国士舘戦(神宮球場)に先発。8回145球、1失点の力投を見せるも、チームは9回に逆転を許し敗れた。3季連続の甲子園出場の夢は途絶える形となった。
先発した中村は7回まで無失点と、国士舘打線を圧倒していた。しかし、8回に失策、安打と四球で1死満塁のピンチを暴投で1点を返された。その後は抑えたものの、和泉実監督はこの回限りでの降板を決断。9回に2番手で登板した中島颯之介投手(3年)が3失点し、逆転負けとなった。
試合後、和泉監督は「中村自身はスパッと自分の腹の中では決めていたので、『中島頼むぞ』という感じでした」。投手1人では、長い夏を戦い抜くことはできない。「なんとかきょうも含めてこの予選を勝ち抜くには、中村頼みを脱却したいということでやっている部分です」と語る。
春夏合わせ52回の甲子園出場を誇る名門校。昨夏から2季連続で出場しており、中村は主将として“重圧”を背負いながらチームを牽引していた。「3季連続2年連続という中で、みんなのモチベーションが上がっていた。ただ、やっぱりどこかで2年連続甲子園に出ているから、自分たちも行けるかもしれないと楽観的な気持ちになっていた」と、胸の内を明かす。
試合後に語った「もっと大きな選手に」
チームが一つの目標に向かっていく中で、主将として「何ができたかわかりませんが、この大会に懸ける思いはみんな一緒だったと思うので、とにかくその思いを忘れずに頑張ろう」と声をかけていた。打たれても感情を見せず淡々と投じる“ポーカーフェイス”とは裏腹に、会見では、想像を絶する名門校の“重圧”が左腕の表情から滲み出ていた。
無念の逆転負けで、自らの夏に終止符が打たれた。試合後、俯きながら語ったのは周りの人々への感謝だった。「自分の3年間は沢山の人に支えてもらってここまでこれた。もっと大きな選手になって恩返しをしたい」。すでに視線は前を向いていた。
炎天下のマウンドで投じた145球には主将としての意地とエースとしての誇りが込められていた。涙を流しながらも最後まで取材対応する姿に滲んだ責任感。3季連続の甲子園の夢は叶わなかったものの、野球人生に終わりはない。夏の借りは必ず返す。
(岡部直樹 / Naoki Okabe)