大号泣…尽誠学園の3年生ボールボーイ ベンチ横のパイプ椅子で届けた思い「最後のチャンス」

ボールボーイとして迎えた決勝戦「勝ちたかった」
8月5日に開幕する第107回全国高等学校選手権大会に出場する49の代表校が出そろいつつある。27日に行われた香川大会決勝では、尽誠学園が3連覇を目指す英明を破り、9年ぶりの甲子園出場を決めた。
勝利の瞬間、尽誠学園の選手が歓喜するなか、ベンチ入りメンバーとは違った感情を胸に雄叫びをあげる選手がいた。ダグアウト隣の報道用カメラ席でパイプ椅子に座り、ボールボーイを務めていた濟藤凰輝投手(3年)だ。
「甲子園を目指して毎日を過ごしてきたけど、まだ僕はベンチに入れたことがなくて。だけどこの大会期間中の練習で、西村監督が『甲子園はメンバー変更の可能性がある』と言われたんです。最後のチャンス。メンバーに入るためには、甲子園に出てもらわないと。なんとしても勝ちたかったんです」
これまでは中継用カメラに気を遣い、試合中は静かに一喜一憂する選手だった。しかし、決勝戦の9回にはエース左腕・廣瀬賢汰投手(3年)に「頑張れー! 行けるぞー!」「腕を振れー!」と叫ぶなど声を張り上げる場面が目立った。9回2死一、二塁で、廣瀬が英明の4番・丸與昊大内野手(3年)を中飛に打ち取ると、顔をくしゃくしゃにし、膝からグラウンドに崩れ落ちた。
しばらくすると、スタンドに体を向けて、ベンチ入りが叶わなかった仲間に両拳を突き上げて「ウワァー!」と雄叫びを上げた。校歌が流れる前から涙は止まらなかった。

忘れぬ誹謗中傷「監督を笑顔にしたい」
甲子園のグラウンドに立つため、地元の淡路島から同校へ進学した濟藤は、優勝候補だった昨夏、夢舞台への切符を掴むことができるかもしれないと期待した。しかし、初戦で丸亀にサヨナラ負け。優勝候補にあげられながらの敗戦にネット上には批難の声が溢れ、濟藤は心ない言葉に怒りを覚えた。
「去年の3年生は本気で日本一を目指していたんです。それなのにSNSやYouTubeのコメント欄には尽誠をバカにしたコメントがたくさんあったんです。特に西村監督へのコメントが多く、監督は刺激を受けたと言われていましたが、僕たちには辛そうに見えました。だからもしメンバーに選ばれたら、西村監督を笑顔にしたいんです」と濟藤は意気込む。
西村太監督は「メンバーは入れ替えるかもしれません。ここからの戦いではなく、この大会中も練習はしていますから」と、20人の顔ぶれを変える可能性を示唆。あと数日でこの夏最後のメンバーが発表される。ボールボーイやスタンド応援に徹した部員60人はまだ誰も夢を諦めていない。
(喜岡桜 / Sakura Kioka)