ライバルのグラブで決めた甲子園 関東第一の“二刀流”坂本…誓う昨夏準Vの雪辱

岩倉戦で先発した関東一高・坂本慎太郎【写真:加治屋友輝】
岩倉戦で先発した関東一高・坂本慎太郎【写真:加治屋友輝】

昨夏は甲子園大会決勝まで進むも、延長10回タイブレークで惜敗

 第107回全国高校野球選手権東東京大会は27日に決勝戦が行われ、関東第一が7-1で岩倉に勝利。創立100周年の節目に2年連続10回目の甲子園出場を決めた。先発した坂本慎太郎投手(3年)が、投げては9回126球1失点完投、打ってもソロアーチを含む4打数2安打1打点と“投打二刀流”で躍動。今夏甲子園のスター候補に名乗りを上げた。

 坂本は2日前の準決勝・実践学園戦で、9回をこの日と同じ126球で完封を成し遂げたばかりだったが、中1日の先発でも最後までマウンドを譲らなかった。米澤貴光監督は「石田(暖瀬投手=3年)も控えていましたが、坂本から『100球で代えるのはやめてください』と釘を刺されていました。『それなら最後まで投げてこい』と言いました」と明かしつつ、「ちょっと彼に頼り過ぎましたね」と頭を下げた。

 打者としても2-1とリードして迎えた4回、先頭打者としてインコースの変化球を右翼席へ運んだが、米澤監督は「あれは余計でした」と表現する。「彼はホームランバッターではない。長打を意識すると、良さが消えてしまう。彼の最も優れたところはミート力です」と考えているからだ。

 さらに指揮官は「坂本はバントもうまいですし、盗塁もできます。走塁技術も高い」と評した上で、「本当は盗塁のサインも出したいのですが、この暑さの中ではやはり厳しい。今大会は『走塁面は少し控えなさい』と言ってきました」と語った。

 坂本は昨夏も、2年生ながら「3番・左翼」で甲子園での準優勝に貢献した。ただ、決勝は京都国際に延長10回タイブレークの末、1-2で惜敗したが、1点を追う延長10回、2死満塁の絶好機で打席に立ったのが坂本だった。期待されるなか、同学年の京都国際・西村一毅投手に空振り三振を喫し“最後の打者”となった。

今年4月のU-18日本代表候補選手強化合宿でグラブを交換

 激闘を演じた坂本と西村は、今年4月に行われたU-18日本代表候補選手強化合宿で“再会”。同じ左腕ということもあって意気投合し、練習では互いのグラブを交換して使っていたという。「しっくりきた」と両者の感覚が一致し、本格的にグラブ交換が実現。合宿終了後に郵送で送り合い、「夏の大会は互いのグラブを使おう」と約束を交わした。

 そして迎えた東東京大会。坂本は約束通り、西村のグラブで決勝戦を含めて4試合に先発し、全て完投(うち2試合は完封)。計36イニングを投げ、わずか2失点という大車輪の働きだった。

 一方、京都国際も27日の府大会決勝で鳥羽高に9回サヨナラ勝ちし、1日早く甲子園出場を決めていた。西村は9回141球3失点完投。こちらは2年連続全国制覇を狙う立場となる。

 坂本は前日の西村の好投に「刺激を受けた」と奮い立ち、自分も完投での甲子園出場決定で応えてみせた。「早く(京都国際と)対戦したい。またグラブを交換したいです」とライバルとの再戦を心待ちにしている。

 昨年わずかに届かなかった深紅の大優勝旗を、今年こそ手にしてみせる。関東第一は改めてスタートラインに立った。

(井上怜音/ Reo Inoue)

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