大谷翔平と“別れる”も「毎試合チェック」 エ軍名物解説者の忘れぬ愛情…裏で見た二刀流の真価

ドジャース・大谷翔平【写真:ロイター】
ドジャース・大谷翔平【写真:ロイター】

エンゼルス在籍6年間で強い絆を築いた通算134勝右腕のグビザ氏

 7月はここまで5戦連続を含む9本塁打と快音を響かせ続けているドジャースの大谷翔平投手は、30日(日本時間31日)に敵地レッズ戦で今季7度目の二刀流出場に臨む。前人未到の道を歩み続ける大谷だが、その一挙手一投足に誰よりも熱い視線を送る人がいる。エンゼルスの地元放送局「バリー・スポーツ・ウェスト」の名物解説者、マーク・グビザ氏だ。同氏は大谷がドジャースで2年目を迎える今も「毎試合チェックしているよ」と誇らしげに微笑む。

 自身もロイヤルズとエンゼルスで投手として活躍し、メジャー通算132勝を記録する実績の持ち主。だからこそ、投手だけではなく打者としても卓越した成績を挙げることが、どれほど難しい離れ業なのか、十分過ぎるほど理解できる。今季、大谷が歩む二刀流復帰の道に関しても「言ってみれば公式戦のマウンドでリハビリ登板をしているようなもの。以前よりも二刀流のバランスを取るのが難しい状況にあると思う。だから、今マウンドに上がりながら、ホームランを量産する様子は驚異的」と驚きを隠さない。

 大谷がエンゼルスで過ごした6年間で2人は強い絆を築いた。試合での活躍だけではなく、練習やワークアウトなど陰の努力も目撃してきたグビザ氏には確信することがあるという。それが、二刀流挑戦を支える源は「レベル違いの意志の強さ」にあるということだ。

「これまで彼ほどの意志の強さを持った人は見たことがない。二刀流を続けるには、運の良さ、恵まれた体格、真摯な練習態度も大事。でも、ショウヘイの意志の強さは桁外れだ。みんながよく言うのは『疲れていないか?』と状態を確認しにいくと、必ず返ってくるのが『大丈夫。とにかく勝ちたいんだ』という答え。普通の人は『疲れていないか?』と聞かれれば『少し疲れているかも』という考えがよぎって、途端に疲れを感じてしまう。ショウヘイはそんな考えも浮かばせないほどの堅い意思を持っている。まったく浮世離れした素晴らしい選手だ」

取材に応じたマーク・グビザ氏【写真:佐藤直子】
取材に応じたマーク・グビザ氏【写真:佐藤直子】

2023年のダブルヘッダーが「史上最高の1日だと思った」が…

 大谷がエンゼルスに入団した頃、今後メジャーでは二刀流選手が増えるだろうと予想されたこともあった。だが、現実を見てみると、大谷以外の成功例はまだない。グビザ氏は「ショウヘイにしかできないユニークなこと。もしかしたら、いつか二刀流が現れるかもしれないが、ショウヘイと同じレベルで成し遂げる人間はそういないだろう」と話す。

 大谷がエンゼルスを離れて2シーズン目だが、グビザ氏は「まるで我が家の次男のような存在」と目尻を下げる。「ショウヘイが投打両面から相手にダメージを与える姿が好きで好きでたまらない」と毎試合チェックを欠かさない。エンゼルスと試合時間が重なることもあるが、中継の最中は他の試合と同様にタブレットで情報をチェックしながら、放送終了後に映像を見直しているという熱心さだ。

 7月19日(同20日)の本拠地ブルワーズ戦から始まった5試合連続アーチもしっかり目に焼き付けた。二刀流で臨んだ21日(同22日)ツインズ戦では先制ソロを許した直後に逆転2ランを一閃。「他に誰ができると思う?」と開いた口がふさがらない。だが、大谷はこれから先も周囲の想像を超えたパフォーマンスを見せ続けると信じている。

「2023年(7月27日敵地タイガース戦)に、ダブルヘッダーの第1試合に先発してメジャー初の完封勝利を飾り、第2試合で2打席連続ホームランを打ったことがある。あれほど完璧な1日を経験した選手はいないし、史上最高の1日だと思っていた。でも、その後も50-50を達成したり、5試合連続アーチをかけたり、いまだに『できるわけがない』ということを次々成し遂げている。つまり、史上最高の1日は、まだこの先の未来で待っているのかもしれない。年齢が上がるにつれ、二刀流が難しくなってくるかもしれない。でも、私は何の疑いも持っていない。何より彼は特別な存在だから」

 次はどんなパフォーマンスで世界中の野球ファンを驚かせてくれるのか。“アメリカの父”は想像をはるかに超える活躍で、世間の常識を突き破ってほしいと願っている。

(佐藤直子 / Naoko Sato)

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