大谷翔平、10打数無安打の真相 “意識”が招く恐ろしさ「深みにはまる」、専門家が指摘

レッズ戦2試合で計10打席無安打5三振、打率.269に降下
ドジャース・大谷翔平投手は7月29日(日本時間30日)、30日(同31日)のレッズ戦2試合で計10打席無安打5三振。猛暑による脱水症状の影響もあったようだが、専門家は「大谷が打撃不振に陥るには、1つのパターンがある」と指摘する。NPB通算2038安打を放ち、MLBにも造詣が深い野球評論家・新井宏昌氏が分析する。
30日現在、ナ・リーグ最多の38本塁打を放っている大谷だが、今季打率は.269に降下。29日には今季8勝を挙げているレッズ先発の左腕ニック・ロドロ投手に3打席3三振。初回の第1打席でカーブ、スライダー攻めに遭い空振り三振に仕留められると、3回の第2打席では初球にインハイのボール球のシンカーを空振りし、最後は外角の152キロのストレートを見送り三振に倒れた。第3打席はカーブを振らされ3球三振。これで調子を狂わされたのか、第4、第5打席も右のリリーバーに空振り三振、右直に打ち取られた。
続く30日は、レッズ先発でかつて日本ハム、ソフトバンクに在籍し3年間でNPB通算21勝を挙げた右腕ニック・マルティネス投手に3打数無安打1三振に抑えられたのをはじめ、結局“5タコ”に終わった。
「大谷は昨年から、左投手にシンカーで内角を攻められることが多く、それはデータとともに頭に入っているはずです」と新井氏。「その球を打ってやろうと強振すると、引っ張りにかかったようなスイングになり、外角球は遠く見えて、見逃したり、当てるだけの打撃になったりします。内角もボール球に手を出すようになり、ストライクゾーンの認識にズレが生じて、深みにはまるのです」と解説する。“左投手の内角球”に対する意識過剰が不振の呼び水になるというわけだ。その傾向が表れたのが、29日のロドロとの対戦だった。
一方、左投手に対して理想的な打撃を披露したこともあった。26日のレッドソックス戦。大谷は初回先頭で、今季ナ・リーグトップタイの12勝を挙げている左腕ギャレット・クロシェット投手が真ん中内寄りに投じた156キロのストレートを、バックスクリーンに38号ソロを放り込んでみせた。
わざわざ「ウイニングショットを打ってやろう」と考える心理
しかし「あの打ち方を続ければいいのに、第2、第3打席では内角のボール球に手を出して連続三振。大谷は左の好投手と対戦した時、こうして自らスタイルを変えてしまい、調子を崩してしまうことがあります」と新井氏は指摘する。
「客観的に見ていると、『常にバックスクリーンへ放り込むつもりで振っていってほしい。そうすれば、ハンガーカーブや背中の方から来る左投手のスイーパーに対してもしっかり溜めて、右翼や右中間へ飛ばせるはず』と言いたくなります」と新井氏。ただ、「自信のある打者ほど、内角を数多く攻められるとわかれば、そこを打ってやろうと強振しがちです。各チームの4番打者が、わざわざ相手のエースのウイニングショットを打とうするのも同様です」と“強打者の心理”に共感を示す。
それは現役時代の1987年に打率.366でパ・リーグ首位打者に輝くなど、左のヒットメーカーとして鳴らした新井氏も同じだった。「僕も左投手に数多くシュートで内角を攻められ、むきになってその球を打ちにいって、失敗しました。今にして思えば、打つべき球ではなかったとわかります」と苦笑する。
自信と負けん気の強さが裏目に出て、スタイルを崩してしまうこともある。バッティングとは、大谷レベルになってもなお繊細で難しいもののようだ。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)