重荷だった“吉田輝星の弟”「嫌なことしかない」 金足農・吉田大輝の成長と覚悟

2年連続出場の金足農は再び1回戦で敗れた
大きな期待に苦しんだ2年半だった。第107回全国高校野球選手権大会は6日、大会第2日が行われ、兄にオリックス・吉田輝星投手を持つ吉田大輝投手(3年)を擁する金足農(秋田)が沖縄尚学と対戦。0-1で惜敗し、2年連続1回戦で姿を消した。
試合は両者譲らぬ投手戦となった。金足農は先発の斎藤遼夢投手(2年)が4回まで安打を許さぬ好投。0-0で迎えた7回、5回2死からマウンドに上がっていたエースの吉田大がタイムリーを浴び、これが決勝点となった。打線は沖縄尚学先発の最速150キロ左腕、末吉良丞投手(2年)を前に14三振を奪われ、完封負けを喫した。
右の内転筋に不安があり先発を回避した吉田大だったが、自己最速を更新する147キロを計測。コンディションが万全でない中でも、エースとしての成長を見せた。指揮を執った中泉一豊監督も「球速が爆発的に伸びたわけではないけれど、力みがなくなって球の質が良くなった。その結果の最速更新だと思います」と、エースの成長に目を細めた。
2018年、夏の甲子園に出場した金足農は日本列島に「金農旋風」を巻き起こし、当時のエースであった吉田輝星は一躍注目の的になった。兄であり、地元のヒーロー。吉田大はそんな輝星と比較されることに苦しんだという。「正直嫌なことしかないですけれど、そんなことを言っていたら野球を続けられない。弟である以上、その名に恥じぬようにと考えました」と吐露する。
先輩や同級生からの期待も絶大だった。「1年生の頃から『お前で打たれたら仕方ない』と声をかけられてきた。だからこそ期待に応えてあげられなかった自分の責任です」と悔しさを滲ませた。
進路は明言せずも「成長した姿をこれから見せていきたい」
後輩からも慕われていた。この試合に先発した斎藤は、幼少期から親交のある吉田大を兄のような存在と表現した。「後ろに控えていてくれて心強かった。大輝さんで打たれたら仕方ないですよ」と信頼を寄せていた。
「負けた砂は、欲しいと思わないです」。吉田大は甲子園の砂を持ち帰ることはしなかった。これで高校野球は幕を閉じるが「仲間への恩返しとしても、成長した姿をこれから見せていきたい」と、進路は明言しなかったものの野球を継続する意志を表明した。
“吉田輝星の弟”ではなく吉田大輝という一人の野球選手として、この悔しさをバネに今後どのようなキャリアを歩むのだろうか。
(井上怜音/ Reo Inoue)