広陵・中井監督が“反省” 試合中に思わず険しい表情…初戦突破も「生徒に失礼なことした」

初戦の指揮を執った広陵・中井哲之監督【写真:加治屋友輝】
初戦の指揮を執った広陵・中井哲之監督【写真:加治屋友輝】

「何か自分たちの野球をしきれんから、厳しい表情になった」

 第107回全国高校野球選手権大会は7日、大会第3日が行われ、第4試合で広陵(広島)が旭川志峯(北北海道)に3-1で逆転勝ち。春夏合わせて甲子園通算80勝目(史上6校目)を挙げた。広陵は前日(6日)、今年1月に寮内で硬式野球部員間に暴力行為があり、3月に日本高野連から厳重注意措置を受けていたことを認め、被害生徒に謝罪する文書を発表していた。さらに学校側が第三者委員会を設置し、現在も調査を継続中だという。

 春27回、夏26回目の甲子園出場を誇る全国屈指の名門校が、これまでとは全く様相が異なる夏を過ごしている。

 重苦しいムードに包まれていた。夏の甲子園初制覇(春の選抜大会は過去に3回優勝)を狙う広陵にとっては、予想以上の苦戦だったかもしれない。

 4回の守備では味方のエラーをきっかけに、相手に先制点を献上。その裏2死から、2年生にして3番を張る高橋海翔外野手が右中間を破る三塁打を放ち、相手の中継プレーが乱れる間に(記録は中堅手の送球エラー)一気に生還して同点に追いついた。6、7回にいずれも犠飛で加点し突き放したのは、さすがの試合巧者ぶりと言うべきだろうか。

 ただ、63歳の中井哲之監督はベンチ内で、いつになく厳しい表情を浮かべていた。「私自身が試合前に『今日はとにかくリラックスして、笑顔でやろう』と言っていたにも関わらず、何か自分たちの野球をしきれんから、厳しい表情になっていたかもしれない。生徒に失礼なことをしました」と反省。

 試合終了後には報道陣の前で、「笑顔でやろうと言った監督自身が、笑顔になりきれんから、(表情を和らげるためにベンチ内で)こんなことをしていましたよ」と自分の顔の皮膚を引っ張ったり、なでたりして見せた。

巨人二岡コーチ、小林誠司、ソフトバンク有原、DeNA佐野らプロへ多数輩出

 チームの窮地を救ったのは、先発して9回124球、3安打10奪三振1失点(自責点0)完投を成し遂げた堀田昂佑投手(3年)だった。中井監督は「普段から何を考えているのかわからないくらいボーッとしているけれど、凄く強い信念を持っている子。大舞台には強い」と評した。

「本当にいろいろなことで皆さんにご心配をかけていますが、こうして夢の舞台の甲子園に立てて、子どもたちが全力でプレーできたことに、感謝しかありません」

 広陵の甲子園通算80勝のうち、1990年4月に就任した中井監督の下で挙げた白星は半数以上の「41」に上り、春の選抜大会を2回制した実績もある。教え子の中から巨人・二岡智宏ヘッド兼打撃コーチ、元巨人投手・西村健太朗氏、巨人・小林誠司捕手、ソフトバンク・有原航平投手、DeNA・佐野恵太外野手、楽天のドラフト1位ルーキー・宗山塁内野手、西武2位の渡部聖弥外野手ら、数多くのプロ野球選手を輩出し“名伯楽”と呼ばれてきた。

 次戦は13日に行われる2回戦で津田学園(三重)と対戦することが決まった。今大会はこうして重圧、責任、不安、一抹の不透明さなどを抱えながら、戦っていくしかない。

【実際の様子】初戦勝利直後…感極まって涙を流す中井監督

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