SNSで話題沸騰…叡明の「魔曲」の誕生秘話 校名から生まれた“独特な音”

硬式野球部員数67人を大きく上回る総勢約250人の吹奏楽部
球場の雰囲気が一変した──。第107回全国高校野球選手権大会は7日、大会第3日が行われ、第3試合に春夏を通じ甲子園初出場の叡明(埼玉)が登場し、津田学園(三重)と対戦した。三塁側のアルプススタンドでは「魔曲」が演奏され、選手の背中を押した。
先制を許し序盤は苦しい展開も、5回に同点に追いつく。タイブレークに持ち込んだが、12回に決着。4-5で敗れ、甲子園初勝利はお預けとなった。
テレビ中継などを通して注目を集めたのは、グラウンド上のフレッシュな戦いぶりだけではなかった。X(旧ツイッター)では「叡明高校」がトレンド入り。硬式野球部員67人に対し、約250人もの部員を有する吹奏楽部の演奏に、多くの高校野球ファンが魅了された。
関東屈指の強豪として知られる吹奏楽部は、現在行われている埼玉県吹奏楽コンクールに出場中で、コンクールに帯同していない部員約170人が甲子園に駆け付けた。埼玉を6日に出発、12時間を要する大移動だったという。
叡明のオリジナル楽曲である「叡明ビクトリー」は特に迫力満点。作曲の裏側には驚きの秘話もある。三塁側アルプス席で指揮者を務めた樋口響さん(3年)によると、「叡明ビクトリー」は顧問の中畑裕太教諭が作曲。バッハが自らの名前「Bach」の音を使って作曲したというエピソードに倣い、中畑教諭が「eimei(叡明)」の音から生み出した一曲なのだという。
「今度は野球部の生徒が他の部活動にお返しをしたいなと思います」
スタンドの演奏や声援は、選手たちにはどのように響いていたのだろうか。
遊撃手兼投手の“二刀流”でチームを牽引した田口遼平内野手(3年)は「吹奏楽の音だけでなく歓声というのを凄く感じました」とうなずく。根本和真主将(3年)は「(叡明カラーの)ピンクに染まったスタンドからの『がんばれ』という声が、本当に力になりました」と穏やかな表情で振り返った。
中村要監督は「叡明のスタンドはナンバーワンだと思っています」と断言。そして「これまでいろいろな方々に支えられてきたので、今度は野球部の生徒が、他の部活動やいろいろな方々にお返しをしたいなと思います」と感謝を述べた。
惜しくも初戦敗退となったが、叡明ナインの奮闘と応援団が残した音色は、高校野球ファンの胸にはっきりと刻まれたことだろう。
(井上怜音/ Reo Inoue)