「2部制」空席目立った甲子園が一変 “夏の東洋”復活、地元効果で”3万3000人”

済美に勝利した東洋大姫路ナイン【写真:加治屋友輝】
済美に勝利した東洋大姫路ナイン【写真:加治屋友輝】

同じ平日の午前中でも、2日前の第2試合はわずか1万3000人だった

“地元”の思いが、酷暑に勝ったということか。第107回全国高校野球選手権大会は8日、大会第4日が行われ、第2試合では14年ぶり13回目の出場の東洋大姫路(兵庫)が5-3で済美(愛媛)に競り勝った。これまで2部制の「午前の部」では空席が目立っていたスタンドにも、3万3000人の観衆が詰めかけ、にわかに活況を呈した。

 テレビ中継などを通して全国から注目される夏の甲子園大会だが、現地のスタンドはやはり、所在地である兵庫県の代表校や近隣県の代表校が登場する試合となると、観客が増え、声援に熱が帯びる傾向が強い。

 この日、近県・和歌山代表の智弁和歌山が花巻東(岩手)に1-4で敗れた第1試合(午前8時1分開始)には2万8000人が足を運び、第2試合(午前10時34分開始)の東洋大姫路-済美となると3万3000人に増えた。

 同じ平日の午前中でも、酷暑の影響もあって、2日前(6日)の大会第2日の第1試合(仙台育英-鳥取城北)が1万1000人、第2試合(開星-宮崎商)も1万3000人にとどまり、特に外野席は空席が目立っていた……というより人もまばらだったのとは大きな違いだ。

 夏の甲子園大会は昨年から、一番気温の上がる時間帯を避け、「午前の部」と「夕方の部」の2部制を導入した。観客は完全入れ替え制で別料金となった。昨年は3日間だった2部制実施日は、今年は6日間に拡大。東洋大姫路-済美の3万3000人は、2部制で行われた日の試合では最多動員となった。

 観客の“数”も増えたが、同時に“質”も上がった印象だ。東洋大姫路の攻撃時、学校関係者が詰めかけるアルプス席だけでなく、ネット裏の一般席からも、「渡辺(拓雲内野手=3年)、引っ張れ、引っ張れよ、渡辺っ!」、送りバントをファウルにする打者がいると「きっちりやらんかい!」と“身内意識”あふれるゲキが飛んでいた。

履正社監督時代に山田哲人を育て、2022年から母校監督に就任

 東洋大姫路の夏の甲子園出場は、2011年以来14年ぶり。岡田龍生監督は履正社(大阪)の監督としてヤクルト・山田哲人内野手を育て、2019年夏に全国制覇を果たした後、2022年から母校・東洋大姫路の指揮官に就任している。「3年前に帰ってきた時から、なんとか夏の甲子園にという気持ちが強かった。まず出場することができて、そして今日、1勝できて、OBの期待に応えることができて、ちょっと肩の荷が下りました」と安堵の表情を浮かべた。

 兵庫には昔、「春の報徳、夏の東洋」という言葉があった。県内では春は報徳学園(春23回、夏16回の甲子園出場)、夏は東洋大姫路(春9回、夏13回目出場)が優勢だったのだ。64歳の岡田監督は「今の子は違うかもしれませんが、僕らの年代の者には、その言葉が身に染みています。春あかんかっても、夏だけはという思いで徹底的に練習したものです」と感慨深げだ。

「僕が監督として帰ってきた時にはもう“夏の東洋”という言葉はあまり聞かれなくなっていましたが、今日は年配のファンも応援してくれただろうと思います。観客も(東洋大姫路側の一塁側ベンチに近い)ライトスタンドが多くて、うれしかったです。皆さんに感謝しています」と頭を下げた。

 この日の甲子園周辺の気温が、午前8時時点で28度、午前10時時点でも30度とやや涼しめだったことも、観客動員を促した一因かもしれない。いずれにせよ、14年ぶりに夏の甲子園へ帰還した地元伝統校の奮闘は、大会を盛り上げる原動力になるかもしれない。

【実際の様子】酷暑も…アルプスに駆けつけた“大応援団” 一変した甲子園

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