未来富山アルプス席に“たった1人” 「逆に単位取れなかったから」留年した元部員の思い

春夏を通じて甲子園初出場「違和感しかないですよ」
第107回全国高校野球選手権は11日、春夏を通じ甲子園初出場の未来富山が初戦(2回戦)で高川学園(山口)に5-8で惜敗した。野球に特化した通信制高校として注目を集め、全校生徒25人のうち23人が野球部員。残る2人のうち1人は野球部OBで、学業の単位を習得するために留年し、アルプス席で応援に精を出していた。
名前は望月陽登(はると)さん、18歳。静岡の常葉大橘から、2年生の秋に未来富山に転入した。昨夏、3年生で挑んだ富山県大会は投手としても登板したが、チームは準決勝で敗退。その後、望月さんは常葉大橘時代の単位が足りなかったことから留年することが決まった。
その後は、正式な野球部員ではないものの、寮に留まり、マネジャーとしてユニホームの洗濯、打撃投手として少人数のチームを支えてきた。そして、今年は後輩たちが甲子園に出場するという夢を叶えてくれた。「後輩たちは本当にかっこいいですね。僕自身が甲子園のグラウンドに立ちたかったですけど、甲子園に連れてきてもらって良かったです」
今の部員とはエースの江藤蓮投手(3年)や中込大捕手(2年)らと仲がいいという。「レフトの松尾(大樹外野手=3年)なんて、今朝まで横で話していたのに、甲子園でプレーしているなんて……。違和感しかないですよ」と笑う。
一般的に留年と言えば、マイナスなイメージを持つ人が多い。しかし、望月さんは「逆に単位を取れていなかったから、ここにいるので……。神様がくれた贈り物ですね。みんなと一緒に帯同させてもらってすごく楽しかったです」と、感謝の言葉を忘れなかった。自身はボールからぺンに持ち替え、9月に卒業をかけた一発勝負のテストに挑む。
(神吉孝昌 / Takamasa Kanki)