大会唯一の「エースで4番で主将」 DH制導入で減少に拍車も…監督があえて“背負わせた”ワケ

尽誠学園・廣瀬賢汰【写真:加治屋友輝】
尽誠学園・廣瀬賢汰【写真:加治屋友輝】

エースで4番で主将を務めた尽誠学園・廣瀬が2打点&完投の活躍

 第107回全国高校野球選手権は16日、大会第11日目が行われ、2回戦で尽誠学園(香川)が京都国際に2-3で惜敗した。大会唯一のエースで4番で主将を務めた廣瀬賢汰(ひろせ・けんた)投手(3年)が9回を一人で投げ切り、2打点を挙げたがあと一歩及ばなかった。大黒柱の活躍に西村太監督は「感謝の気持ちは大きいです」と言葉を贈った。

 1点リードを許した5回、2死満塁の好機で廣瀬に打席が回ると、球場のボルテージはマックスに。内野席からも手拍子が聞こえてくる程の盛り上がりの中、4球目を捉え一、二塁間を抜ける2点適時打で逆転に成功した。

 投げては7回までに1失点に抑える好投を見せた。8回に逆転を許したものの、9回101球を投げ切り、計6イニングで3者凡退を記録した。この夏はまさに大車輪の活躍だった。初戦でも2打点を挙げ、投手としても6安打完封。香川大会でも全5試合に登板し、わずか5失点で甲子園に導いた。

 近年珍しくなった「エースで4番」を体現。今大会では小松大谷(石川)の江守敦士投手(3年)、青藍泰斗(栃木)の永井竣也投手(3年)、未来富山の江藤蓮投手(3年)ら4人のみ。来春の選抜からはDH制の導入が決定しており、ピッチャーは投球に専念できるため、打席に立たない選択も増えるかもしれない。

 さらに、時代の変化とともに責任を一人に背負わせない“主将2人制”を採用する高校も増えてきた中で、主将まで務めあげた。なぜこの決断に至ったのか。西村監督は「人間性ですね。真面目で、冷静で、厳しい言葉もかけられて、リーダーシップも発揮できる。すごい大人に感じられる部分が沢山ありましたので、いい主将でした」と任命した理由を明かした。

廣瀬が決めた主将の覚悟「全て自分の責任だと思って」

「最初は大変だったと思いますけどね……」

 監督人生でも初めての決断。全て背負わせる事には何度も悩んだ。春には打順を6番に下げ、負担を軽くすることも試した。「でもチームは勝てなくて……。廣瀬自身も打順を気にすることなくやってくれました」と、また“定位置”に戻すことを決め、「やっぱり中心でしたから、主将がブレたらみんながブレてしまう」と決意を固めた。

 どんな時でも冷静沈着。「負けた試合は全て自分の責任だと思ってやってきました。なのですごい悔しかったですが、その責任を与えてもらった事は感謝しています」。まっすぐ前を向き、表情を崩さずに振り返った。「仲間から信頼される選手になるために、自分にも仲間にも厳しく、日本一の人間を目指してやってきました」。やれることは全てやってきた。

 支える3年生の存在も大きかった。「まとめ上げたのは廣瀬ですが、それを支えられる副主将たちがいましたから。だから任せられました」と西村監督。一人だけに任せてはいられない。「周りも負けじと這い上がって、廣瀬もさらに突き抜けて。互いに伸びていくようでした」。危機感とライバル心が自然と互いを強くさせた。

「エースで4番で主将」だったから、大黒柱がいてくれたから、ここまで強くなれた。尽誠学園の夏は廣瀬を中心に回っていた。

(木村竜也 / Tatsuya Kimura)

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