身長170cmでも“世代最高素材” 関東第一・坂本の脳裏に昨夏の屈辱…進化した頭脳と技術

創成館に出場した関東第一・坂本慎太郎【写真:加治屋友輝】
創成館に出場した関東第一・坂本慎太郎【写真:加治屋友輝】

打っては「初球から振ると決めていた」先制打、投げては好救援で4回無失点

“世代最高素材”だ。全国高校野球選手権大会で関東第一(東東京)の坂本慎太郎投手(3年)は16日、3回戦の創成館(長崎)戦に「3番・中堅」でスタメン出場。打っては3回に先制2点適時打を放ち、投げては6回からの4イニングを無失点に封じた。投打二刀流にこだわる期待株は、世代代表にこれまで何度も選出されてきた。今年の夏も世界を相手に戦う可能性は高い。

 思いのこもった一撃だった。両チーム無得点で迎えた3回の攻撃。1死満塁で左打席に入った坂本が初球の143キロのストレートを打って出ると、打球はゴロで一、二塁間を破る。走者2人を迎え入れる先制打となり、坂本は一塁側の自チームのベンチへ向かって派手なガッツポーズを繰り出した。

「初球から絶対に打つと決めていました」と坂本は言い切る。脳裏に浮かぶのは、2年生で出場した昨夏の決勝・京都国際戦だ。延長10回タイブレーク、2死で最後の打者となったのが坂本だった。同学年の左腕・西村一毅投手に対し、初球の真ん中付近の甘いストレートを思わず見逃し、最後は空振り三振に倒れた。

「あの打席で初球を振れなかった悔しさは、今も残っています。この1年間、甲子園で借りを返すために、初球を振ることを意識して練習してきました」と坂本は明かす。「自分にプレッシャーをかけて、練習試合でもチャンスで初球を振ることを意識してやってきました。最初はファウルや空振りが多かったのですが、ここにきて、いい打球が出るようになって嬉しいです」と感慨深げだ。

 投球も理詰めである。捕手の出すカーブのサインは1つだが、相手打者のタイミングの取り方などを見ながら、スピードの違うカーブを3種類投げ分ける。「基本的には、90キロ台のものと110キロ前後のもの。調子が良い時は120キロ近いものも投げることができます」と説明。この日、1点リードの8回、2死二、三塁のピンチで、相手の5番の左打者へ、初球に内角高めの117キロのカーブを投じ遊飛に仕留めたのも、「あのイニングの冒頭、相手に90キロ台の緩いカーブを見せておいたので、その分、速めのカーブで詰まらせることができたのだと思います」と説明した。

 投手としては小柄な部類の170センチで、際立ったスピードボールもない坂本が相手打者抑えられるのは、この頭脳と技術があればこそだ。

準々決勝は日大三との“東京対決”「やってみたいと思っていました」

 幼い頃から“野球漬け”で、夏休みに遊んだ経験がほとんどない。それでも、小6の時には台湾で行われた「2019年 第5回 WBSC U-12ワールドカップ」、中3ではメキシコで「2022年 第5回 U-15ワールドカップ」に出場。異国での国際大会出場が、印象的な夏休みの思い出となっている。

 今年9月に沖縄で行われる「U-18ワールドカップ」にも、ぜひ出場したいところ。同い年で坂本とともにU-12、U-15のワールドカップに続けて出場していた現・智弁学園(奈良)の今井蓮内野手は候補に入っていないことから、坂本だけに“日本代表3世代制覇”の可能性がある。「頑張って選ばれたい。沖縄でちんすこうを食べたいです」と意欲を見せる。

 その前に、19日に行われる今大会準々決勝は、日大三(西東京)との“東京対決”となることが決まった。過去に対戦はなく、「正直言って、やってみたいと思っていました。(日大三は)ものすごく打力のあるチームなので、自分の投球が通用するかどうかを確かめたいですし、豊富な投手陣に対して打って活躍したい気持ちもあります」と二刀流にふさわしい抱負を述べた。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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