実力差感じても「怖くなかった」 春王者に下剋上…県岐阜商にあった合言葉「想定内」

8強唯一の公立校が選抜王者に“下剋上”を果たした
春王者を下したのには、理由があった。第107回全国高校野球選手権は19日、大会第13日が行われ、第3試合で県岐阜商が横浜(神奈川)に延長タイブレークの末8-7でサヨナラ勝ちを収めた。16年ぶりの4強入りを果たした裏には、チームを団結させた“合言葉”があった。
「何があっても想定内。ミス絡みの失点でも、『想定内』『想定内』と選手たちが明るさを貫いてくれました」。どんな展開を迎えても焦らなかった理由を藤井潤作監督は明かした。
県岐阜商は前半から打線がつながり5回を終了し、4-0。そもそも4点もリードしていることが「想定外」だった。だからこそリードしているときは「いい想定外」と選手同士で地に足を着けて臨んだ。6回に3点を許した場面でも「想定内」と声を掛け合い、不安や焦りを感じることは無かった。
8回には失策が絡み同点に追いつかれたが、選手が下を向くことはなかった。藤井監督も「いいゲーム! いいゲーム! こっからだぞ! とベンチで声が飛び交っていて、私自身が落ち込みかけたところを立ち直らせてもらった感じがします」と感謝した。
春王者に実力差は感じるも「怖くなかった」
それは岐阜県大会から意識的に取り組んできた“合言葉”の力だった。「色んなことが起こる中で、いちいち驚いていたらもたない。全ては想定内と考えていくように」と藤井監督。さらに「甲子園ではお祭りをしようと話していました」と語り、あくまでも挑戦者という立場を忘れなかった。
昨年の明治神宮大会と春の選抜を制し、この夏で3冠を狙う名門相手でも、ひるむ様子はなかった。ベンチでムードメーカーとして声を枯らして盛り上げた中下絢太捕手(3年)は横浜について「もちろんレベル高さや、ジワジワ迫ってくる感じはありましたが、怖くはなかったです」と選手が心の余裕を感じていたことを明かした。
「想定内」の他にもナインが誇る合言葉がある。「ロブトップ」。学校マスコットのライオン「ロブ」がトップに立つとの思いと、「top(首位)」を「rob(奪う)」という意味を込めたもう1つの合言葉だ。試合前や安打した時にもロブトップの意味を込め片手を掲げる。
大方の予想が横浜の勝利だったであろう下馬評を、唯一の公立校がひっくり返して見せた。支えてくれる2つの合言葉を胸に、まだまだ聖地に“旋風”を起こし続ける。
(木村竜也 / Tatsuya Kimura)