沖縄尚学・2年生左腕の強心臓 対戦相手が“地元校”も不動心「ちょっと騒がしい」

延長11回169球完投勝利を挙げた仙台育英との激闘から中1日
ハートが強い2年生だ。第107回全国高校野球選手権大会は19日、沖縄尚学が東洋大姫路(兵庫)との準々決勝に2-1で競り勝ち、初のベスト4入りを果たした。今大会注目の最速150キロ左腕、末吉良丞投手(2年)はリリーフで7回からの3イニングを無失点で締めた。
「沖縄尚学として夏初めてのベスト4ということで、目標である夏の頂点へ一歩近づけたと思います」。末吉は試合後、あっけらかんとした笑顔を浮かべた。
17日の3回戦で仙台育英(宮城)を相手に延長11回169球完投勝利を成し遂げてから、わずか中1日。さすがにこの日は、先発を同級生の新垣有絃投手に譲り、ベンチスタートとなった。それでも絶対的なエースが出番なしで終わるはずもなく、「もともとは(新垣)有絃と自分の間に、田場(典斗投手=2年)を挟む予定でしたが、まず有絃が頑張ってくれて(6回1失点)、競ったゲームになったので、自分が直接7回から行くことになりました」と明かす。
1点リードの9回には、(傍目には)絶体絶命のピンチがあった。併殺崩れなどの誤算もあって2死一、三塁とされ、打席には3回に新垣有から左翼席へソロを放っていた桑原大礼捕手(3年)を迎えたのだ。
驚かされたのは、末吉がこの桑原を「ホームランを打っているバッターだったので、歩かせてもいいという考えでした」と、1球もストライクを入れないまま四球で歩かせたことだ。これによって2死満塁となり、沖縄尚学にとっては“逆転サヨナラ負け”となる走者が得点圏の二塁に進んだのだが、末吉は「リスクを取りながら最善の選択をしていかないと、チームの勝利はつかめません。勝負を避けるべきところは避けないと」と沈着冷静だった。
結局、途中出場の次打者に右の代打が起用されたが、末吉は2球目のスライダーを打たせ、遊ゴロに仕留め試合を終わらせた。
準決勝では同じ2年生の菰田を擁する山梨学院と対戦
それだけではない。相手は地元・兵庫の代表の東洋大姫路。9回の守備では自チームのアルプス席以外、四方八方から相手へ大声援が送られ“完全アウエー”状態だった。それでも末吉は「ちょっと騒がしいかな、と思いました」と、半端でない“大物感”を漂わせた。
21日の準決勝では、山梨学院と対戦することが決定。相手の身長194センチの剛腕・菰田陽生(こもだ・はるき)投手(2年)との“2年生好投手対決”に注目が集まる。
末吉は「彼(菰田)は大きい体の使い方がうまく、スピードボールもある。打撃もリーチがあって、パワーがある。最重要人物として対策を考えたい」と警戒する。一方で、自分の持ち味については「最後まで球威の落ちないストレートが一番だと思っています。その中で、切れのあるスライダーや落ちる球も駆使していきたい」と表現した。
全国制覇へ向けて、千載一遇のチャンス到来の沖縄尚学だが、末吉には来年もある。1年後には、どんな投手に育っていることやら……。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)