大谷翔平44号も…感じた“物足りなさ” 専門家も思わず不安視「不本意な打撃に」

ロッキーズ戦に出場したドジャース・大谷翔平【写真:ロイター】
ロッキーズ戦に出場したドジャース・大谷翔平【写真:ロイター】

NPB通算2038安打の新井宏昌氏が分析「センター方向への意識あったからこそ」

【MLB】ドジャース 11ー4 ロッキーズ(日本時間20日・デンバー)

 ドジャースの大谷翔平投手は19日(日本時間20日)、敵地でのロッキーズ戦に「1番・指名打者」で出場。2回に6試合ぶりの44号ソロを放ち、ナ・リーグ本塁打王争いでは、同日のマリナーズ戦で44号を放ったフィリーズのカイル・シュワバー選手とのデッドヒートが続く。5打数1安打2打点で今季打率は.284、打点は83となった。現役時代にNPB通算2038安打を放ち、MLBにも造詣が深い野球評論家・新井宏昌氏は、この日の1発を称賛する一方、今季の大谷にある“物足りなさ”も感じている。

 まさに“弾丸ライナー”だった。大谷はカウント1-1から、ロッキーズ先発の左腕オースティン・ゴンバー投手が内角低めに投じた145キロの速球を一閃。打球は低い弾道で左中間フェンスを越えていった。

「調子が悪い時であれば、ライト線付近に飛びファウルになりがちなコースの球でした。センター方向に打ち返そうという意識があったからこそ、引っ張りにかかることなく、右中間に飛ばすことができたのだと思います」と新井氏は指摘する。

 理想的な打撃だったが、新井氏は「今季の大谷は試合の序盤に素晴らしいホームランを見せてくれて、誰もが『この調子なら今日はもう1発、あるいは固め打ちを見せてくれそうだ』と思った時、意外にその後の打席でいい内容が続かないケースが多いと思います。ぜいたくかもしれませんが、そこに一抹の物足りなさを感じてしまいます」と述懐する。

 この日も第2打席で44号ソロを放ち、3回の第3打席で四球を選んだ後、6回先頭で第4打席に立つと、カウント2-0から真ん中低めの甘いチェンジアップを見逃した。結局カウント3-2から外角いっぱいの154キロの速球を打ち、二ゴロに倒れた。「あの打席に関してはカウント2-0となった時点で『この打席も歩かされるのかもしれない』という思いがよぎったのかもしれませんが、今季の大谷には、あのように甘い球をあっさり見逃してしまうシーンがよくある気がします」と新井氏は指摘する。

ベンチ内でタブレットを操作する姿に浮かんだ一抹の心配

 確かに、今季の大谷のマルチヒット(2安打以上)は36試合にとどまっており(成績は19日現在、以下同)、昨季の61試合に比べると大幅に減りそうだ。これが打率(昨季.310)、打点(同130)が意外に伸びない一因かもしれない。

 固め打ちが少ないのはなぜか。「最初は投手として2年ぶりに実戦復帰したことによる肉体的、精神的な疲労が原因かとも思いましたが、投手としての登板日であっても素晴らしい打撃を見せる日はありますし……」と思考をめぐらす新井氏。

 1つの推察として、「大谷がベンチ内でタブレットを操作している姿を映像でよく見ます。データを分析するのはもちろん悪いことではありませんが、打席ごとに狙い球を絞り込み過ぎて、それが外れた時に甘い球を見逃したり、不本意な打撃になったりしているのではないか。そんな風にも見えます」と分析する。

 大谷は20日(日本時間21日)に投手として今季10度目の先発マウンドに上がるが、登板日翌日の21日(同22日)には欠場して休養を取る見込みとなった。こうした周囲の配慮が、大谷の打撃の流れを変えることになるか。その行方は個人タイトル争いはもちろん、チームの浮沈に大きく関わる。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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