大谷翔平と競り合うシュワーバーの脅威 専門家が指摘した「固め打ち」の破壊力

ドジャース・大谷翔平【写真:ロイター】
ドジャース・大谷翔平【写真:ロイター】

フィラデルフィアで44号放ったシュワバーに、デンバーで大谷がすぐに追いつく

 ナ・リーグの本塁打王争いは、ドジャースの大谷翔平投手とフィリーズのカイル・シュワーバー外野手が44本で並び(成績は19日=日本時間20日現在、以下同)、一騎打ちとなっている。右投げ左打ちのスラッガー同士で、年齢も近い2人にはどんな違いがあり、何が勝敗を分けることになるのか──。

 シュワーバーが米ペンシルベニア州フィラデルフィアにある本拠地シチズンズ・バンク・パークで、マリナーズ戦の初回に右中間へ先制44号ソロを放てば、大谷もコロラド州デンバーの敵地クアーズ・フィールドで、ロッキーズ戦の2回に右中間へ44号ソロを運び肩を並べた。

 現役時代にNPB通算2038安打を放ち、MLBにも造詣が深い野球評論家・新井宏昌氏は「シュワーバーはもともと圧倒的なパワーを持つ一方、三振が多く、極端に打率が低いのが特徴の打者でした。しかし昨季あたりから打率も上昇傾向で、相手にとってより手ごわい打者になっています」と評する。

 確かにシュワーバーは、2022年に46本塁打で初のタイトルを獲得したが、同時にリーグ最多の200三振を喫し、打率は.218と低かった。翌2023年に至っては前年を上回る47本塁打を量産しながら、215三振は2年連続リーグワーストで、打率は2割も切って.197に終わった。

 昨季は本塁打を38発に減らした一方で、打率は.248に上昇。今季は既に大谷と並ぶ44発を放ちながら、打率も.249をキープし“2割前後”のレベルからは脱却した感がある。新井氏は「もともと1発の脅威があるだけに、四球を多く取れる打者で、打率はともかく、出塁率は決して悪くない打者でした(打率.197だった2023年も126四球で出塁率は.343、今季の出塁率は.371)」と付け加える。

日本人の右投げ左打ちに共通する特性「利き腕の操作性」

 1994年7月5日生まれで31歳の大谷に対し、シュワーバーも1993年3月生まれの32歳。ほぼ同年代で、脂が乗りきる年齢といえる。2人の打撃の特徴には、どんな違いがあるのだろうか。

 新井氏は「タイミングを崩されたとしても、なんとか右手1本でもコンタクトしようとして、体勢を崩されながらヒットやホームランが出るのが大谷。対照的にシュワーバーは、常に自分のスイングをやり切り、タイミングを外されれば、あっさり空振りします。その代わり、芯に当たる時には100%近いパワーがボールに伝わるので、途轍もない飛距離が出ます」と比較する。

「大谷の打撃には、日本人の右投げ左打ちの特性が表れています。タイミングを外された時、利き腕の右手の操作性を使ってコンタクトしようとするのです」とも。ちなみに、新井氏自身にも、新井氏がオリックス打撃コーチ時代に指導したイチロー氏(マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)にも、右投げ左打ちという共通点がある。しかし「右投げ左打ちであっても、アメリカ人の選手にはあまり見られない傾向です」という。

 そして大谷VSシュワーバーの勝敗を分けるポイントを、新井氏は「どれだけ固め打ちができるか」と予想する。大谷とシュワーバーの1試合2本塁打以上は今季、3度ずつある。昨季は大谷が3度(そのうち1度は1試合3本塁打)、シュワーバーは6度(うち2度が3本塁打)あった。

 大谷は一昨年にア・リーグ、昨季にはナ・リーグで本塁打王を獲得し、一昨年にリーグトップの出塁率.412、昨季も打率.310と、リーグトップの出塁率.390をマークしており、確実性でシュワーバーを上回る。今季の本塁打王争いでも、最終的にシュワーバーを下すことができるか。

 ドジャースはナ・リーグ西地区、フィリーズは同東地区でともに首位を走っており、両者はポストシーズンで対決する可能性も高い。それだけに、なおさら興味深い。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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