「ふざけんなよ!」と叫んだ背後に監督が… 日大三V腕・近藤一樹が明かす全国制覇秘話

日大三高時代の2001年、夏の甲子園を制した近藤一樹氏【写真提供:産経新聞社】
日大三高時代の2001年、夏の甲子園を制した近藤一樹氏【写真提供:産経新聞社】

振り返ると小倉全由監督が…ある意味忘れられない夏

 2001年夏の甲子園で日大三(西東京)を優勝に導いたエース・近藤一樹さん(元ヤクルト)がポッドキャスト番組「Full-Count LAB」に出演。当時の優勝秘話を明かした。今大会では名前1文字違いのエース・近藤優樹投手(3年)が注目を集め、チームも決勝まで駒を進めた。当時の全国制覇の裏側には小倉全由前監督の鶴の一声で封印された背筋も凍る“Tシャツ事件”があった。

 24年前の優勝メンバーが忘れもしない出来事は、西東京大会の初戦を戦う朝だった。選手たちは、目標を胸に刻むため背中に大きく「全国制覇」と刻印したTシャツを発注し、その日を迎えた。「かっこいいね」と盛り上がった選手たち。大会まで秘密にし、初戦のウォーミングアップに臨む予定だった。

 しかし、出発前に当時の小倉監督がそのTシャツを目にした瞬間、事態は急変する。「そのTシャツを着るのはやめろと監督が言いまして……」。禁止令が即座に下された。「それを見た相手が気持ち良くない。『ちょっと刺激するのはやめとこうか』っていうことでした」と近藤さんは当時を振り返る。今となっては、小倉監督の対戦相手への敬意と礼節を重んじた教育の一環だったと理解をしている。

 ところが、この時、まだ高校生だった近藤さんは思わず「もうなんでだよ! ふざけんなよ」と口にしてしまう。運悪く、その言葉の背後に監督が立っていた。「監督はその言葉を聞いた瞬間に『全員、食堂集合!』ということで、一瞬で集合させました」。

「Full-Count LAB」に出演した近藤一樹氏【写真:編集部】
「Full-Count LAB」に出演した近藤一樹氏【写真:編集部】

小倉監督の真意とは?

 当時の日大三は甲子園で当時のチーム打率の大会記録を樹立するほど強打を誇り、指揮官も手応えを掴んでいた。だからこそ、余計な行為に映ったのだった。普段通りにやれば勝てる。それが隙を与えることにつながると感じとったのだ。

 選手を集めた食堂では、小倉監督が言葉に熱がこもっていった。監督の思いに、選手の中では涙を浮かべるものもいたという。この一件が選手たちに真の謙虚さを教えることになった。

 忘れられぬ出来事が起きた初戦から、日大三は見事に西東京大会を勝ち抜き、隙を見せることなく、甲子園出場を決めた。甲子園行きが決まった後、監督からTシャツは「着てもいいよ」と許可が出たそうで、着用した選手もいたが、本当に着てもいいか不安だった選手もいたとのこと。今でも大切に持っている選手もいる。

 後輩たちは23日に沖縄尚学との甲子園決勝戦が控える。24年前の夏、頂点へと駆け上がった先輩たちにも数々の伝説があった。近藤さんからはたくさんのエピソードが紹介された。結果論かもしれないが、“Tシャツ事件”から指揮官の思いに触れることができたナインの気持ちが引き締まった瞬間でもあった。多くの経験をしてきた優勝投手の近藤さんにとっても忘れられないエピソードとなっている。

【実際の音声】監督の一言で封印 日大三V腕・近藤一樹が明かす全国制覇の裏で起きていた“Tシャツ事件”

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